Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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内皮細胞接着分子とそれらの腫瘍転移の器官選択性における役割
Bendicht U. PauliRobert C. JohnsonJoanne WidomChao-Fu Cheng山形 貞子
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1992 年 4 巻 19 号 p. 405-414

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抄録

ある器官に存在する血管支それぞれが発現している内皮細胞接着分子が転移の器官選択性に関係している。肺の血管に構成的に発現している2種の接着分子についてここで記そう。第一の分子はネズミのB16メラノーマ細胞を結合する内皮細胞接着分子Lu-ECAM-1である。90kDaLu-ECAM-1は、B16メラノーマ細胞の接着と肺転移を選択的に促進する。固定化したLu-ECAM-1へのメラノーマの付着は、抗Lu-ECAM-1mAb6D3、可溶性Lu-ECAM-1、ラクト-N-フコペンタオースによって投与量依存的に阻害される。in vivo では、Lu-ECAM-1をmAb6D3により妨害するとB16F10の肺での腫瘍結節形成が阻害される。しかしLu-ECAM-1は、他の肺転移腫瘍細胞 (例えばKLN205癌細胞)や肺以外の他の器官に転移する腫瘍細胞系 (例えば肝転移B16-L8-F10、RAW117-H10) とは結合せず、又これらの転移には影響を与えない。そして、リンパ球や好中球とも結合しない。第二の接着分子は、ラットのジペプチジルペプチダーゼIV (DPP IV) である。このシアロ糖タンパクは、非転移性細胞にくらべて転移性細胞の表層により大に発現されているフィブロネクチンを介して肺転移性の前立腺癌や乳癌細胞と結合する。フィブロネクチンの発現の増加に伴ない腫瘍細胞のβ1とβ3インテグリンも増加する。DPPIVの結合はRGP以外のフィブロネクチンの配列によって仲介され、またそのペプチダーゼドメインとは無関係である。これらの構成的に発現される接着分子は血流にのって運ばれる癌細胞がある部位の血管に特異的に定着するのに役立っていると信じられている。そしてまだどのように信号が送られるのか知られていないが、腫瘍細胞の内皮への結合を高め、そしてギャップジャンクションを介する情報交換を開始させることで腫瘍細胞を血管外に遊出させ、第二の器官での腫瘍増殖を促進させるような別の (一時的に発現される) 接着分子を増やすように働いているのであろう。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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