Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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脳のレクチンの構造と機能
Jean-Pierre ZanettaSylvain LehmannAli BadacheDidier ThomasSusanna MaschkePascale DufourcqPhilippe MarschalSabine Kuchler小林 康代
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1992 年 4 巻 19 号 p. 415-426

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抄録

脳組織において、様々な糖結合タンパク質が検出されているが、そのうち、単離され、その機能が明らかになっているものが数種ある。β-ガラクトシド結合レクチン、マンノース結合レクチン、グリコサミノグリカン結合タンパク質である。これらは脳の発生において、種々の機能を持つ。β-ガラクトシド結合レクチンは、軸索が目的の場所に伸びていく時や、あるいは神経突起伸張、細胞内輸送、核の機能に関与すると考えられている。マンノース結合レクチンは、未成熟なニューロンの移動の接触誘導や髄鞘形成、シナプス形成などの細胞接着、あるいは認識メカニズムに関与する分子として働くことが示されている。β-ガラクトシド結合レクチン、マンノース結合レクチンともに、それぞれ、実験的アレルギー性脳脊髄炎、多発性硬化症といった脱髄によって起こる病気を理解する上で興味深い。マンノース結合レクチンの特異的な機能として、接触阻害の喪失と悪性細胞の特異的なホーミングが挙げられる。
脳組織において、様々な糖結合特異性や機能を持つ数種の糖結合タンパク質が同定されている。これらの中には、細胞内輸送、免疫細胞のホーミング、その他特異的な細胞接着のプロセスに見られる現象など、一般的な現象に関与しているものもある。細胞接着に関連して、i) シナプス形成の第一段階で、ニューロンを認識する機能を果たす膜結合性のマンノース結合レクチンR1、ii) ミエリン構造の安定化や軸索と髄鞘化細胞との間の結合形成、発生段階のニューロン移動の接触誘導などの接着プロセスにおいて働く可溶性マンノース結合タンパク質CSLがある。これらの分子は、病理学にも関係があり、例えばβ-ガシド結合レクチンは実験的アレルギー性脳脊髄炎に、また、CSLは多発性硬化症に関係している。悪性細胞の接触阻害喪失のプロセスやホーミングのメカニズムにおいて、細胞接着や細胞認識の糖生物学的システムは重要である。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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