時間学研究
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「旧黒羽城の時鐘(現栃木県那珂川町常円寺の寺鐘)銘」の鐘銘の全体とその前半部の撰文者について
大沼 美雄
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2020 年 11 巻 p. 65-78

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抄録

 仏教寺院にある寺鐘の大半は、元々寺鐘としてすなわち寺院内の鐘楼や鐘撞堂といった所に設置される鐘として鋳造されたものであるが、中には藩などが時を報せる時鐘として鋳造したものであったのだが、藩などの消滅などを経て寺院に移され寺鐘になったものもある。そのため、寺鐘の中でも元々は時鐘であったものの中にはその鐘銘の中に時間に関連した記述がよく見受けられるようである。ただ、鐘銘はその殆どが漢文体で綴られているということもあり、本格的に解読されたものは殆ど無い。ましてや時間に関連した記述がある鐘銘が紹介され、その中に見えるそういった記述が研究の対象にされたという例は従来は殆ど無かったと言ってよい。それで本研究では、元々は時鐘であったが後に寺鐘になったものの一例として「旧黒羽城の時鐘(現栃木県那珂川町常円寺の寺鐘)」を取り上げ、先ず最初にそれに刻まれた鐘銘の全文を原文・読み下し文・口語訳の3体で紹介し、時間に関連したどのような記述があるのかを明らかにした。また、その鐘銘の研究の手始めとしてその撰文者、特にその前半部の撰文者のこと、特に荻生徂徠(1666~1728)に関係していた人物であったこと、また黒羽藩の出身者の中には他にも徂徠の高弟が2人いたことを明らかにし、当時の黒羽に徂徠の学説の影響があった可能性を指摘したものである。

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