抄録
光環境と睡眠について、覚醒方向の非視覚的生理作用という観点から多くの研究がなされてきたが、夕暮れの光変化を模した就寝前の漸減光制御について、睡眠状態を客観評価した研究はみられない。そこで、昼白色と電球色のLEDを用いて照度と相関色温度を連携して漸減制御するシステムを作成し、光曝露後の睡眠中の精神生理状態を評価することを本研究の目的とした。照明条件は白熱電球(定常光)と、2種類の漸減速度を設定した青色励起及び紫色励起LED照明の計5条件(1夜1条件)である。対象者は睡眠に関する問題のない若年成人男性17名で、約110分間の光曝露の後、消灯して7時間の睡眠とした。その結果、睡眠段階出現割合や睡眠潜時などの睡眠変数には照明条件による主効果はみられなかったが、入眠期のδ Power値を直線回帰した傾きと潜時差には、青色励起LED条件以外で有意な負の相関がみられた。このことから、白熱電球定常条件や紫色励起LED条件の方が、入眠のプロセスがより自然である可能性が示された。また、筆者らの先行研究の定常光条件との比較では、漸減光制御を施したLED条件の方が、起床時の主観的睡眠感のスコアが有意に高かった。さらに、入眠期の相関関係は先行研究でも同様の傾向であった。以上の結果から、漸減光環境条件は定常条件のLED照明よりも夜間就寝前光環境として適しており、特に、紫色励起LEDで精神生理的な親和性がみられる可能性が示唆された。