時間学研究
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2020年7月の梅雨前線豪雨による熊本県人吉市の洪水災害の特徴と土地利用の時空間的変遷
山本 晴彦兼光 直樹渡邉 祐香坂本 京子岩谷 潔
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2022 年 13 巻 p. 21-59

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抄録
2020年7月4日未明から朝にかけて熊本県の南部を中心に局地的に猛烈な雨や非常に激しい雨が降り、7月3日12時から翌日の4日12時までの24時間降水量が400mm以上の範囲は東西70km、南北30kmの広い楕円状で観測された。人吉市のアメダスの最大24時間降水量は410.0mmで、観測史上第1位の記録を更新し、リターンピリオド(再現期間)は200~400年であった。この豪雨により、人吉水位観測所の水位は計画高水位の4.07mを5時半頃に超え、4.90mの水位を観測した後、欠測となった。この結果、人吉市市街地の球磨川両岸では堤防からの越水や堤防の損傷により堤内地に氾濫流が流れ込み、浸水想定区域図の計画規模を上回る甚大な洪水災害が発生した。本災害による浸水被害は、人吉市が近年経験した3度の水害(昭和40・46・57年)を浸水高で1.5~3.6mも上回った。特に、市街地の「おひな通り九日町」では、店舗や旅館・ホテル等で4mを超える浸水被害に見舞われており、休業や廃業した店舗も見受けられた。本災害では浸水被害を受けにくい微高地の段丘面や自然堤防でも被害が発生し、氾濫平野に位置する低平地の中神町の温泉施設では浸水高が600cmにも達していた。1901-1902年から2009年までの旧版地図と空中写真を用いて土地利用の変遷を解析した結果、1960年頃から低平地の水田が転用による開発が進められていた。特に中部地域では国道219号線バイパスの開通によりロードサイド店舗が開設され、住宅の建設も進み、洪水リスクの高い地域の開発が浸水被害を助長していることが明らかになった。
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