抄録
本研究では健常若年男性成人を対象とし,起床時に評価した主観的睡眠潜時と睡眠ポリグラフィによる客観的睡眠潜時や睡眠段階出現割合に加えて起床時の主観的睡眠感などとの相関関係を,就寝前光環境を評価した実験で記録したデータを再解析し,対象者1名につき8~10夜計測した150夜データおよび16対象者ごとの平均値について検討した。
主観的睡眠潜時の日間変動をみると,第一夜効果は明瞭でなく,自己評価の時間刻みは主観的睡眠潜時の長さによって変わる傾向がみられた。16対象者データを相関分析した結果,主観的睡眠潜時はPSGから得られる各客観的睡眠潜時と中等度の有意な相関があり,Stage 2潜時と最も強い相関を示した。さらに,睡眠を4分割した第一区間におけるWake出現割合と有意な正の相関,起床時の主観的睡眠感のうちOSA因子Ⅳ(統合的睡眠)と中等度の有意な負の相関がみられた。また,客観的睡眠潜時が短い対象者の一部で主観的睡眠潜時を長く見積もっており,低い主観的睡眠感が関与していると考えられる。
以上の結果から,睡眠初期の睡眠状態が意識下で一定程度記憶され,起床時に想起された結果が主観的睡眠潜時に反映されるだけでなく,起床時の主観的睡眠感のうち統合的睡眠(熟眠感)評価が強く関与していることが示唆される。このように,一人の対象者を複数夜で計測記録したことにより,日常生活における睡眠評価手法に寄与する新たな知見が得られたと考える。