学術の動向
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特別寄稿
科学者と社会
──日本学術会議論の一つとして
吉川 弘之
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2023 年 28 巻 6 号 p. 6_76-6_92

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抄録

 日本学術会議と政府の間に、会員選考の自主性の理解をめぐって不正常な状態が生まれ、政府が日本学術会議の法改革を企図するなかで、日本学術会議の存在根拠と役割(独立に職務を行う科学者の代表機関による政府と社会に対する科学的助言)について、あらためて議論が深められる必要性が生じている。その議論は、社会における科学・科学者の役割について、政府と科学者が共通の理解に立つこと、そのような共通の理解が社会に広く普及し、共有されることを求めるものである。20世紀末の日本の中央省庁等改革に際して、日本学術会議法(1948年)に基づき設立以来不変のミッションを有する日本学術会議に対して、新たに政府の科学技術行政の司令塔として総合科学技術会議(2014年内閣府設置法改正で総合科学技術・イノベーション会議)が設置された。日本の科学と技術の発展と振興、および社会における科学と技術の役割の発揮を科学者が責務とするならば、この二つの機関のそれぞれの意義と関係を、共有すべきこうした議論のなかで位置づける必要がある。本稿は、「科学研究者」および「科学知識使用研究者」の対概念を軸にして、そのための基礎的な考察を行うものである。

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