学術の動向
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高度研究体制の早期確立を目指して
伊藤 正男
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1996 年 1 巻 1 号 p. 31-43

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抄録

我が国に「高度研究体制」を早急に実現するためには、研究費、研究者、研究機構、研究体制の4者のそれぞれについて、政治、行政、産業界並びに研究界自身が次の各項目の要請を満たすべく努力を傾注することが必要である。
I. 研究費については、
1) 研究費における政府支出の率を速やかに欧米先進国の水準に高め、
2) 原理的な基礎研究の学問的な価値、応用開発研究の社会的重要性に加えて、「戦略研究」の将来における応用の潜在力にそれぞれ注目して幅広く助成を強化し、
3) 国費より経常経費としてだけでなく投資的経費としても研究費を支出し、
4) 民間の研究助成財団の活動を促進して、異なる評価基準を持つ多元的な研究資金源を確保すること。
II. 研究者については、
1) 研究環境条件を整備し、
2) 契約研究者を導入して雇用形態を重層化し、
3) 特に創造性に富む時期の研究活動を促進し、
4) 研究者の自主性を確保するとともに、公正で多角的、重点な評価システムを確立し、
5) 人材を国際化し、
6) 研究者の倫理を確立し、人権を保護し、
研究者がその研究能力を最大限に発揮する条件を整えること。
III. 研究機構については、
1) 大学、研究所、企業の調和のとれた発展を促し、
2) 規模的に弱体な研究所セクターの拡充を図り、
3) 3セクター間の人的交流、研究協力を促進し、
4) 研究組織に安定性と流動性の二重性を導入し、
5) 研究支援者を増加し、
国内の多くの研究室を有機的に結び、国際的にも開かれた稠密な研究ネットワークを構成すること。
IV. 我が国全体の研究体制については
1) 研究計画の優先順位を多角的な基準により選択するメカニズムを備え、
2) 国外の研究体制と国際交流、国際対応、国際協力の太いパイプで繋ぎ、
3) 政・官・産・学の4者の総合調整機能を備え、これらの努力の全てを研究者の創造性、独創性の最大限の発揮に向けて集中させることである。

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