2006 年 11 巻 1 号 p. 7-13
マツ材線虫病によるアカマツの年越し枯れ過程を明らかにするために,20年生アカマツにマツノザイセンチュウを7月に接種し,日中の水ポテンシャルと蒸散速度を測定した。線虫接種木は,生残木14本,年内枯死木1本,翌年冬期の枯死木2本,および,翌年春から夏にかけての枯死木3本となった。年内枯死木では,9月に水ポテンシャルが急激に低下し,10月末までに針葉の褐変を伴って枯死した。冬期の枯死木では,蒸散速度は9月にほとんど停止し,水ポテンシャルは秋には-2.20MPaおよび-2.47MPaと低い値を維持したが冬期に低下し,枯死した。冬期の枯死木は,年内に幹の通水機能がほとんど停止し,枝条部が冬期に乾燥枯死したと考えられる。接種翌年の春から夏にかけての枯死木では,水ポテンシャルと蒸散速度は接種翌年4月にはそれぞれ-0.88〜-1.14MPa, 0.05〜0.13mgH2O・gDW-1・sec-1を維持したが,4〜5月にマツノキクイムシが多数穿孔した後,6〜7月に急激に低下し萎凋枯死した。春から夏の枯死木では,マツノキクイムシの穿孔が病徴進展を促進している可能性が示唆された。