抄録
青森県の白神山地と南八甲田,秋田県の森吉山において,既知の10本のクマゲラ営巣本と3本のねぐら木の形態を調べ,4つの営巣地周辺に0.25haのプロットを設けて胸高周囲15cm以上の毎木調査を行った。さらに過去の本州のクマゲラの営巣本およびねぐら木に関する知見をあわせることによって,本個体群のハビタット要求性に関する知識を整理した。すべての営巣本およびねぐら本は生きたブナであり,日本海型のブナ純林の中にあった。営巣木の胸高直径の平均は68cm(SD:±9.8cm),92%は50cm〜80cmの範囲にあった。ねぐら木の平均は66cm(SD:±6.2cm)で同様の範囲にあった。巣穴の入り囗の方位は一定でなく,斜面方位とほぼ一致しており,両者の間には有意な相関があった。69%の営巣本が,3年以上繰り返し繁殖に使用されていた。