山形県の落葉広葉樹林内で採集されたタヌキの糞を分析し,タヌキによって種子散布される植物の果実の特徴について検討した。2年間に16カ所のタメフン場から採取した糞サンプル137個のうち,91.2%の糞に種子が含まれていた。出現種子は不明種6種を含む35種で,22種が多肉果であった。糞サンプルにおける出現頻度・種子数ともに多いサルナシ,エンレイソウ,ケンポナシ,およびオオウラジロノキは,タメフン場で実生が確認された。これらの種は地味な色,果実の甘みや強い香り,大きな果実サイズといった哺乳類散布型の果実の特徴をもっていた。里山で哺乳類散布型の果実を形成する種にとって,タヌキは重要な種子散布者である可能性が示唆された。