抄録
著者らは1970~1972年の期間に済洲島南岸の地域においてマレー糸状虫症が濃厚に分布していることを確認した。為美1里の場合, 海岸部の住民は内陸部側の住民に比べ濃厚に感染を受けていた。この傾向は下洞部落でも同様で, これは伝搬者であるAedes togoiの発生地である海岸の岩礁地帯と住民の居住地との距離が重要な役割を果しているものと推定された。しかし, 為美のように大きな村では, 内陸部住民における皮内反応膨疹サイズは, 海岸側に比べ小さかったが, 下洞のような小さな部落では, 内陸側と海岸側の住民の間には差が見られなかった。これは下洞の場合, 海岸からの距離が小さく, 海岸に密着しているため, 感染蚊による感作という点では, 全住民がほぼ一様であったためと思われる。為美1里のmf保有者は1970年に集団治療を実施したが, 1970年と1972年に夫々の時点での6-11才児を皮内反応でチェックした結果, 1972年には皮内反応膨疹サイズに縮少が見られた。この事実は, その地域のフィラリア伝搬の低下と関連があると推定される。