Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
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流行地長期滞在日本人の住血吸虫症例に関する研究-血清診断, 好酸球増多およびプラジカンテルによる治療の評価
小原 博松田 肇藤田 紘一郎鳴戸 弘田中 寛
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1990 年 18 巻 2 号 p. 159-171

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抄録
住血吸虫の流行地に長期間滞在していた日本人152名を対象に, micro-ELISA法による住血吸虫の血清診断を実施した。血清診断による陽性者7例を含め, 9例の住血吸虫症例 (マンソン住血吸虫症3例, ビルハルツ住血吸虫症2例, マンソンまたはビルハルツ住血吸虫症例4例) を経験し, 全例に対し治療を行った (このうち7例に対しプラジカンテルを用いた) 。さらに治療後における抗体価の推移を観察した結果, 抗体価は徐々に低下して20カ月後までには全例陰性化していることが確認された。調査対象者152名中24例に好酸球増多症が認められ, そのうち7例は住血吸虫症であった。7例中2例は, 30%以上の著明な好酸球増多を呈していた。治療薬を投与後, 好酸球数は抗体価よりもすみやかに低下し, 比較的早期に正常化した。流行地に長期間滞在した際には, 住血吸虫の検査も必要であると思われる。早期診断上micro-ELISA法による血清診断は有力であり, 陽性例には早期にプラジカンテルによる治療が勧められる。治療後, micro-ELISA法と好酸球数を測定することにより, 治癒の判定に役立つことが示唆された。
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