Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
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エチオピア産淡水貝類の研究, 特に人寄生住血吸虫の中間宿主貝の同定, 分布および生態
板垣 博鈴木 了司伊藤 洋一原 隆昭テフェラ ウオンデ
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1975 年 3 巻 2 号 p. 107-134

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抄録
1969年1月より1971年1月にわたる期間にエチオピア各地で, マンソン住血吸虫およびビルハルツ住血吸虫の中間宿主貝に重点をおいて数度にわたる採集をおこない, これらの中間宿主貝の分布および生息条件を調査した。採集された腹足類 (巻貝類) は2目 (前鰓目および有肺目) からなり, 前鰓目には3科が含まれ, 有肺目には4科が認められた。また, 斧足類 (二枚貝類) には4科が含まれていた (Table 1)。エチオピアにおいてはBiomphalaria pfeifferi rueppelliiBulinus (Physopsis) abyssinicusとが, それぞれマンソン住血吸虫およびビルハルツ住血吸虫の最も重要な中間宿主である。エチオピアにおける淡水貝類の分布には2つの型がみられ, 1つは全土に広く分布するもの (広布種) と他は散在するものである。Biom. pfeifferi rueppelliiBulinus (Bulinus) sericinusとは前者の型に属し (Fig. 2, 3), Biomphalaria sudanicaBulinus属のPhysopsis亜属に属する各種など (Figs. 5, 6) は後者にはいる。淡水貝の同定は困難なことが多く, 住血吸虫症の研究者のためにエチオピア産淡水貝の検索表 (Tables 3, 4, 5, 6) および検索図 (Figs. 12, 13, 14, 15) を作成した。淡水貝の分布を左右する生態学的条件としては, 降雨および生息地の栄養的条件 (餌料の多少) が水温やpHなどよりも重要であり, また水流も重要な条件となることがある。地域の開発にともなう人の移住によって水域が排泄物や家庭廃水によって軽度に汚染されると中間宿主貝にとって好適な生息場所を提供することとなり, これらの地点が新しい住血吸虫症の流行地となる可能性がある。
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© 日本熱帯医学会
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