Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
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沖縄に於ける鉤虫症の疫学的研究
国吉 真英
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1975 年 3 巻 2 号 p. 135-159

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抄録
沖縄南部の1農村で鉤虫の感染状況と感染成立の動態要因を観察, 6年間を通じて集団駆虫を行って, 感染率の推移を追究した。又Necator americanusAncylostoma duodenale両種鉤虫の生態と抵抗性について実験的観察を行った。対象となった南風原村の住民の鉤虫感染率は32.4%で大部分はN. americanusである。感染率は農耕従事者に画然と高く, しかも農耕作業時間と密接な関係がある。鉤虫皮膚炎の発生からみて最も主要な感染の場所は沖縄特有の甘蔗畑で, 冬瓜畑, 白菜畑がこれに次ぎ, 1月の最寒期を除いて年間を通じて感染が成立しているものと思われる。また農業の形態と屎尿の高率な使用が鉤虫蔓延を助長している。6カ年の集団治療により著明な感染率の低下がみられるが, 農業専従者には毎年, 新旧両感染がくりかえされている。しかも成人女性に多く, 大部分はN. americanusである。両種鉤虫感染幼虫の蒸留水中での生存期間は高温で短く, 低温で長いが, いずれの温度でもA. duodenaleで長い。虫卵孵化率は27C前後で最も高い。各種化学肥料 (石灰窒素, 硫酸アンモニア, 過燐酸石灰, 塩化カリ), 農薬として用いられる各種殺虫剤 (スミチオン, デルドリン, マラサイオン) は一定濃度以上で両種鉤虫感染幼虫の生存に対して影響を与えるが, いずれもN. americanusで著明である。又, 色々の濃度の酸, アルカリ, (硝酸, リン酸, 乳酸, アンモニア, 炭酸ソーダ, 亜硝酸ソーダ, 二硫化炭素) や殺卵剤, 食塩水の殺虫作用についても観察されたが, 常にN. americanusA. duodenaleに比較して抵抗力が弱いことが証明された。
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© 日本熱帯医学会
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