抄録
わが国の小児がんの生存率は, この20年間で飛躍的に改善され, 70%を上回る多数の小児がんの長期生存者が成人の仲間入りをするようになった.しかしながら, この生存率の向上に伴い, 治療による晩期障害のリスクが問題となってきた.また, 小児がん患者では遺伝性がん素因を有している場合も多く, その場合は次世代がリスクを引き継ぐ可能性もある.こういった中, 晩期障害のリスクをもった長期生存者たちが成人しQOLの高い生活を続けること, そして結婚, 挙児, 次世代の健やかな成長を支援するための長期的かっ包括的なフォローアップシステムの構築が求められている.しかし, 研究が長期にわたること, プライベートな問題にふれることなどから, その研究実施には倫理的配慮が不可欠である.とくに, 本人への告知の問題, 研究参加についての代諾と同意のあり方, プライバシー保護の問題, 情報提供と教育, 相談窓口の開設などが, 長期フォローアップ研究では重要であると考える.