抄録
Babesia gibsoni感染によるビーグル犬の血液一般性状, 体温の変動, および体液性抗体の推移について実験的に検討した。
その結果, バベシア感染による90日齢ビーグル犬の一般臨床症状は同年齢の雑種犬に比較して極めて重く, 死亡例が観察された。
ビーグル犬では虫体含有赤血球が感染後1週に出現し, 5週で末梢血液中から消失した。第2次および第3次虫体含有赤血球の出現は, それぞれ7週および15週に観察された。その出現率は第1次が最も高く, 以後, 漸減した。血色素量および血球容積の減少は感染赤血球出現率の程度と逆傾向を示した。血色素尿は感染後10-20日目のビーグル犬に認められたが, 雑種犬では実験全期間中全例に検出されなかった。白血球の変動では単球がビーグル犬および雑種犬共に感染後2-3週に著増した。体温は末梢血液中に感染赤血球が出現する時期に一致して明らかな発熱が観察された。
ディスク電気泳動による血清ハプトグロビンは, 感染後1週より減少し3週では消失した。一方, 血清蛋白分画の変動では, アルブミンが感染後漸減し, グロブリンが増加した。とくに, γ-グロブリンが著しく増加した・免疫グロブリン, IgMおよびIgGは, 感染後5週で感染前に比較してそれぞれ3-4倍に増加した・感染に伴う血清抗体の出現および推移では, IgMおよびIgG抗体が感染後1週より共に全期間観察された。