抄録
8名の男子大学生に7日間毎日30℃, 湿度70%の室内で労作を行わせた。労作は負荷2kg, 毎分50回のペダル踏み運動を60分間行わせた。発汗テストを訓練開始前日と訓練終了の翌日に行った。発汗テストは30℃, 湿度70%の室内で両下腿を42℃の水槽に90分間温浴させて行った。高温環境下の労働の馴化により発汗量の増加, 発汗テスト中の直腸温上昇の減少と心拍数の減少が認められた。高温馴化によって同じ発汗量に対する汗のNa濃度はやや減少した。我々の開発した半定量的耐熱性の指標で判定すると, 耐熱性は高温馴化で向上したことが示された。耐熱性の向上は高温曝露時の生理的変化を著しく変えて水分損失による生体内に生ずる歪を犠牲にしてもたらされている。