東海社会学会年報
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誰が「消費される農村」に向かうのか
グリーンツーリズムの拠点開発に対する住民意識
三田 泰雅
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2019 年 11 巻 p. 72-84

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抄録
本稿では,グリーンツーリズムの拠点開発構想に対する態度の規定要因を明らかにする. 「消費される農村」論の立場に立てば,グリーンツーリズムは一種の「農村空間の商品化」である.いっぽうで,農村の住民みずからが「消費される」立場を主体的・戦略的に選んでゆく傾向も指摘されている. いずれの場合も,活動的な住民の姿が取り上げることが多く,後景に退きがちな一般住民がどのような態度を示すのかは明らかになっていなかった. そこで本稿では,三重県いなべ市のA地区で行なわれた質問紙調査データをもちいて,拠点開発を支持した人々は誰なのかを明らかにしようとした. 具体的には,調査以前に拠点開発の構想を知っていたかどうか,拠点開発の構想を支持するかどうか,の2点について,回答の分化とその規定要因を検討した.その結果,「活性化構想」は一部の住民にだけ支持されていること,支持している住民は地域への愛着を強くもつ地域のリーダー層であったこと. 40~59歳の人々は賛成と反対の中間的立場になりやすいこと,支持しない住民はリーダー層と接点の少ない人々であったこと,などが明らかになった.この結果から,強固な住民組織をもつ地区であってもリーダー層と一般住民の意見の乖離は無視できないこと,またリーダー層との社会的距離が賛否の意見を規定していることがわかった.
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© 2019 東海社会学会
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