2021 年 13 巻 p. 133-141
本稿は,日本において規制緩和や「構造改革」として話題となる産業構造の問題に対し,フランクフルト学派のレギュラシオン・アプローチに着目することによって,理論的なアプローチを模索するものである.一般にレギュラシオン・アプローチは,各国の歴史的,制度的な特徴を分析し,経済的な蓄積体制を様々な広義の制度がいかに調整(レギュラシオン)し,循環を形取っているのかを分析対象とする.それに対し,ヨアヒム・ヒルシュにみられるフランクフルト学派のレギュラシオン・アプローチは,国内要因と世界システムを結びつけようとしながら,国家の権力理論を企てる.とりわけ日本において,経済分析における制度の歴史的特徴は,山田信行の「総体性」を構成する弁証法的歴史社会学による産業社会学理論をふまえても,重要であると分かる.世界システムあるいはグローバル経済において,(フランクフルト学派の)レギュラシオン・アプローチが,日本の資本主義論争や「企業社会」,企業的レギュラシオンといった歴史的な制度形成やその研究史をふまえ,静態論というよりは動態論として日本等の国家を分析することに展望がある.