特殊教育学研究
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私立金沢盲唖院に関する一考察 : 設立者松村精一郎を中心に
北野 与一
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1979 年 17 巻 2 号 p. 1-8

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抄録

この報告は、私立金沢盲唖院に関して、松村精一郎の生涯、彼が育まれた石川県の社会的教育的背景、彼の設立の動機、設立経過、閉院の理由、設立者の特質、課題などに若干の考察を行ない、これまでに発表されたいくつかの報告に補充を加えるものである。松村の書簡及び当院に関係する教育史的史料などの文献により考察した結果、(1)松村は天然痘とその余病により、聴覚・言語・運動障害をもっていた、このことが当院の特質であった、(2)彼は障害者に理解のある師に教えられ、協力を惜しまない親友をもっていた、(3)加賀藩に紹介された欧米の盲・聾教育が、松村の成長に間接的に影響していた、(4)中村正直に師事したことや、帰郷途中、京都で楽善会友に出会い、京都盲唖院を参観したことが、松村の設立の動機であった、(5)研究・調査に大阪、京都校を訪れた、(6)経済的変動やコレラの流行、県令の更迭、就学勧誘の努力の不足も閉院の要因であったなどの結論を得た。

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© 1979 日本特殊教育学会
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