特殊教育学研究
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原著
  • 亀山 優佳, 細川 美由紀
    原稿種別: 原著
    2024 年 62 巻 2 号 p. 61-70
    発行日: 2024/08/31
    公開日: 2025/02/28
    [早期公開] 公開日: 2024/06/28
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    本研究では青年期の定型発達者を対象として、ASD(autism spectrum disorder)傾向が高い者においてもASD者と類似した特性共感の困難が認められるかどうか、ならびにASD傾向が高い者でも、自身と性格特性が類似した他者に対してであれば状態共感は高まるのかについて検討することを目的とした。調査には、ASD傾向を測るAQ(Autism Spectrum Quotient)、特性共感を測るIRI(Interpersonal Reactivity Index)、ある人物に対する状態共感を測る共感反応指標の3指標を用いた。その結果、ASD傾向が高い対象者は、ASD傾向が低い対象者に比べIRIの「共感的関心」得点が低かった。しかし、自身と性格特性が類似した人物に対する共感反応指標における「共感的関心」得点は、類似していない人物に対するものよりも高かった。このことから、ASD傾向が高い者は、共感的関心における特性共感の困難が認められる一方で、自身と性格特性が類似した他者に対しての状態共感は高まる可能性があることが示唆された。

  • 木村 芽生, 池田 浩之
    原稿種別: 原著
    2024 年 62 巻 2 号 p. 71-80
    発行日: 2024/08/31
    公開日: 2025/02/28
    [早期公開] 公開日: 2024/08/01
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    本研究では、自閉症スペクトラム障害(ASD)のある者のきょうだいが同胞の障害を理解するプロセスを明らかにし、プロセスに影響を与えた要因について検討するために、知的障害を伴わないASDのある同胞がいる青年期のきょうだい3名に半構造化面接を実施し、複線経路・等至性モデルを用いて分析を行った。その結果、研究協力者は共通して、同胞の存在を障害の有無にかかわらず受け入れてきていたが、そこに至るプロセスは個々で異なり、さまざまな社会的影響を受けてきたことが明らかになった。また、青年期には自身の経験を統合しながら、同胞の障害や同胞との関係性、自分の将来、家族や社会の障害理解に関する多様な価値観を形成する可能性が示された。きょうだい支援においては、個々の背景を理解した上で、家族全体への包括的な支援を行うことが求められる。今後の課題は、事例研究をさらに蓄積していくことである。

  • 戸嶋 純那, 二宮 一水, 福田 奏子, 佐島 毅
    原稿種別: 原著
    2024 年 62 巻 2 号 p. 81-92
    発行日: 2024/08/31
    公開日: 2025/02/28
    [早期公開] 公開日: 2024/08/16
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    数の理解の基礎となる重要な概念の発達を促す系列化課題は、一見で全体を把握できる視覚による場合と、継時的に知覚していく触運動感覚による場合で大きく異なる。本研究では、重ねることで順番の正誤がフィードバックされる入れ子課題を用いて触運動感覚による系列化課題を作成し、その難易度を検討することと、入れ子課題の課題遂行方略を分析することを目的とした。分析は、①入れ子課題の難易度、②難易度に影響を与える要因、③ピアジェの系列化の発達段階と照らし合わせた方略の検討、の3つの観点から行った。その結果、入れ子3個より5個のほうが、また、入れ子を1つずつ手渡しで提示していくより同時に提示するほうが難易度は高く、入れ子の数によって提示方法を検討する必要性が示唆された。また、入れ子課題による盲幼児児童の系列化の発達も、ピアジェの発達段階と同様の順序がみられた。本研究の知見は盲幼児児童の系列化の指導や評価に活用可能と考える。

資料
  • 齊藤 彩, 原口 英之
    原稿種別: 資料
    2024 年 62 巻 2 号 p. 93-103
    発行日: 2024/08/31
    公開日: 2025/02/28
    [早期公開] 公開日: 2024/08/16
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    大学等の高等教育機関において、発達障害をはじめ障害のある学生への支援の必要性に関する認識は高まってきたものの、同じ高等教育機関である専門学校(専修学校専門課程)に焦点を当てた研究はきわめて乏しい。本研究では、全国280校の専門学校を対象に、障害学生支援の実態ならびに発達障害特性のある学生の在籍と支援に関する質問紙調査を実施した。その結果、障害学生支援の専門部署・機関や担当者の配置、対応要領・基本方針、規程などの策定、障害学生支援に関する活動や取り組みについては、大学・短期大学・高等専門学校と比べて未整備の学校がきわめて多い現状が確認された。診断の有無を問わず発達障害特性のある学生については、8割近い専門学校に少なからず在籍していると捉えられていた一方で、学校生活のさまざまな側面における支援は十分に提供されていない学校もあることが示された。発達障害特性のある専門学校生への支援は発展途上にあり、さらなる整備、促進が今後の課題である。

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