特殊教育学研究
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早期公開論文
早期公開論文の11件中1~11を表示しています
  • 石井 正幸, 赤木 和重
    論文ID: 22P045
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/03/30
    ジャーナル フリー 早期公開
    知的障害児における協調運動の困難さが多く指摘されてきた。就学前後の知的障害児に対する運動指導を実施した先行研究は,みられるものの,学童期以降の先行研究は少ない。そこで,本研究の目的は,知的特別支援学校中学部生徒2名に,5種類の粗大運動によるサーキットトレーニングを3か月15回実施し,粗大運動および微細運動の改善を目指すことであった。トレーニング期間の前中後に粗大運動と微細運動の運動課題を各2種類実施して,効果を測定した。粗大運動の効果は,おぼん運び・片足跳びで測定した。微細運動の効果は,シール貼り・はさみ操作で測定した。その結果,サーキットトレーニング実施前後を比較すると,2名ともに,粗大運動と微細運動の課題結果ともに改善がみられた。サーキットトレーニングは,粗大運動と微細運動どちらにも改善に寄与する可能性があり,協調運動の機能向上は学童期以降でも可能性があることが示唆された。
  • 髙橋 三郎
    論文ID: 22P047
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/03/30
    ジャーナル フリー 早期公開
    ことばの教室は吃音のある小学生の支援の場だが、そこでの臨床報告は少ない。そこで、本稿ではことばの教室に通級する小学校1年の吃音児1例に対して実施した流暢性形成法とDCMに基づくアプローチ(DCM)を併用した指導の結果を報告した。対象児は小学校1年生の吃音児1名であった。発話速度の低下と軟起声、軽い構音接触を中心とした流暢性形成法と、話し相手が要求水準を下げた関わりを行うDCMを中心に行った。その結果、吃音頻度は100文節中73から10へ、平均吃音生起時間は2,078ミリ秒から788ミリ秒と減少した。家庭での吃音重症度評定は5から3へと低下した。CAT得点は18から8へと低下した。以上のことから、流暢性形成法とDCMの併用は発話の流暢性の改善に有効であり、コミュニケーション態度の向上にも繋がったと考えられた。流暢性形成法とDCMの併用は今後のことばの教室の指導の選択肢の一つになると思われた。
  • 吉本 萌, 佐島 毅
    論文ID: 22A025
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー 早期公開
    視覚と聴覚の両方に障害のある先天性盲ろう児はコミュニケーションに困難を有することが多く,発達段階に沿った意図的かつ特別な指導を必要としている。そこで本研究では,特別支援学校で盲ろうの児童生徒を担当した経験を有する教員6名を対象とし,3つの発達段階に応じた指導や指導上の工夫を明らかにすることを目的とした。調査の結果,盲ろう児のコミュニケーションの性質は他者とのつながりを形成することに始まり,徐々に一般性が高まっていくことが明らかになった。また,盲ろう児の指導を担当する教員はニーズに即して様々な指導を行っていることがわかった。一方で盲ろう児一人一人の多様性が大きいこと,また盲ろうが稀少障害であることから,一般化の困難な面については,具体的に事例的研究を行うなどし,その個別性についても明らかにする必要がある。
  • 青木 康彦, 野呂 文行
    論文ID: 22B034
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー 早期公開
    知的障害、発達障害のある児童生徒においては、好みを把握し、活用した支援が望まれる。本研究では、わが国の特別支援学校小学部・中学部(知的障害)、小・中学校の特別支援学級(知的障害、自閉症・情緒障害)の児童生徒を担当する教員を対象として質問紙調査を実施し、児童生徒の好みの把握と活用法について実態調査することを目的とした。調査対象者は、特別支援学校小学部・中学部、小・中学校の特別支援学級の教員173名であった。その結果、90%以上の特別支援学校、特別支援学級の教員が好みを把握しており、約半数の教員が最低1日1回好みを把握することが明らかになった。また、好みの活用法については、好みを教材や課題に取り入れることは実施しているが、強化子として利用している教員は少ないことが示唆された。考察では、教員を対象とした好みのアセスメント法や好みの刺激の活用法に関する研修の必要性について論じた。
  • 井口 亜希子, 田原 敬, 原島 恒夫
    論文ID: 22B041
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー 早期公開
    本研究は、コミュニケーションにおいて音声、手話、指文字を用いる特別支援学校(聴覚障害)幼稚部の教員(年少児担当2名、年長児担当2名)が会話場面で用いる指文字について、年少児・年長児期別に指文字の使用特徴及びその背景にある指文字の使用意図を明らかにすることを目的とした。まず、会話場面を録画し、教員の指文字の使用頻度、使用語彙の種類、併用された視覚情報について分析した。次に、録画した会話場面において教員が指文字を用いた意図を聴取した。その結果、年少児期に比して、年長児期は指文字の使用頻度がやや高く、使用語彙の種類が多かった。さらに指文字提示時に併用された視覚情報は、手話単語に加え、年少児期は実物や絵、年長児期は文字(単語や文章)が多いことが特徴的であった。年少児期は指文字を使用するための準備段階の形成、年長児期は幼児の指文字習得を前提とした日本語語彙拡充の促進が意図されていると考えられた。
  • 石田 基起, 石倉 健二
    論文ID: 22P050
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー 早期公開
    本研究は、全国の肢体不自由・病弱特別支援学校に多く在籍している重度脳機能障害を有する超重症児の教育的対応における不快状態評価に、鼻部皮膚温度が活用可能であるかを探索的に検討することを目的とした。対象児は、覚醒と睡眠の区別すら困難であった超重症児2名であった。教育実践から選定した教育的対応の鼻部皮膚温度を測定した。常時使用している心拍モニターによって得られる心拍値と鼻額皮膚温度を比較することで、評価の妥当性について検討を行った。その結果、情動換起に伴う鼻部皮膚温度の変動を取り出す処理によって得られた鼻額差分温度の低下と心拍の加速反応との間で、50%以上の生起一致率が認められた。また、生起が一致した刺激は聴覚・触覚刺激のカテゴリーに偏りが確認された。このことから、鼻部皮膚温度が超重症児の不快情動を引き起こす苦手な刺激を探索する際に活用しうることが推察された。
  • 荻布 優子, 川崎 聡大, 奥村 智人, 松﨑 泰
    原稿種別: 原著
    論文ID: 22A023
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー 早期公開
    本研究は小学1~6年生155名を対象に漢字書字課題を行い、正しく整っている/判読可能の2基準で採点し、学力及び視覚情報処理能力との関係を検討した。結果、双方の採点基準で学力との相関を認めたが、整った文字は判読可能文字に比して相関係数が有意に高くはならなかった。また文字の正確性や綺麗に書くこと自体が学習となる下学年では整った文字と視知覚視覚認知の相関が強く、相関は学年が上がると弱くなることから、整った文字を習得する過程では視知覚・認知機能の負荷が高く、上学年で整った文字を書くためには文字の詳細なイメージを思い浮かべる必要性から視覚性ワーキングメモリへの負荷の高さが示唆された。よって学力を従属変数とした場合に正しく整った文字が書けることの蓋然性は確認されず、文字形態を整える指導に注力することは発達障害をはじめとする認知機能に個人内差のある児童の学習到達度には好影響とはならない可能性が考えられた。
  • 山岡 あゆち
    論文ID: 22A038
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー 早期公開
    本研究は,日本の2つの官民協働刑務所における職業訓練を受講している犯罪傾向の進んでいない535名の受刑者(男子444名,女子91名)を対象に受刑者の就労に対する考え方や意欲について調査を実施した。就労を阻む考え方,就労・就労継続につながる考え方,就労意欲についてそれぞれ,先行研究に基づき確認的因子分析を行った。その結果,複数 の就労に関する捉え方や就労意欲に関する下位概念が抽出されたが,多くの項目で天井効果が見られ,それぞれの下位項目についてモデルの適合度に課題が残った。就労意欲以外の各項目について性差を検討したところ,女子受刑者は,出所後の就労に対して期待を抱き,自分にとっての大切な事柄を認識する一方で,受刑による被排除感を強く感じていることや,うまくいかないことがあった場合のコーピングが苦手である傾向が見られた。就労に関する心理的な要因や環境要因についての今後の研究が望まれる。
  • 長南 浩人
    論文ID: 22R042
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー 早期公開
    本研究の目的は、イマージェントジェントリテラシーに関する海外の健聴児と聴覚障害幼児の研究を概観し、我が国の聴覚障害幼児のリテラシーに関する研究上の課題を検討することであった。その結果、聴覚障害児のイマージェントリテラシーの出現に関する研究では、客観的な観察研究に基づき、多数の聴覚障害児を対象とした幼児期全体に渡る縦断的研究の必要性が示された。特に文字や本への関心、態度面を観察し、加えてイマージェントリテラシーの出現とリテラシーの発達の過程が健聴児と同様か否かを検討する必要性が示された。イマージェントリテラシーの発達に関連するナラティブについては、ワーキングメモリの発達との関連は今後の検討テーマであり、この点の検討によりイマージェントリテラシーの発達を促す大人の関わり方が示唆されるものと考えられた。環境については絵本の読み方や見せ方が中心に検討されていること、また躾などを通して形成される親子関係の構築とイマージェントリテラシーの発達に関する研究は、ほとんど見られず、今後の検討課題であることが示された。加えて、どのようなコミュニケーション手段を使う環境に子供が置かれているか、それと言語力の発達の関係も今後の検討課題とされた。最後に、上記事項を総括的に評価する指標は未だ見られず、これに基づく指導計画の作成や指導の評価がなされることの必要性が示された。
  • 佐々木 健太郎
    原稿種別: 研究時評
    論文ID: 21T045
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/08/23
    ジャーナル フリー 早期公開
    知的障害者において、学校教育から就業への移行に際して従来重視されてきたのは就業支援及び余暇支援であった。本来、知的障害者に限らず、就業と余暇は相互に影響を及ぼし合うものであるにも関わらず、上述の二つの支援はそれぞれ別個に取り上げられてきた。本研究では、知的障害者における就業及び余暇の先行研究を概観し、各々の現状と共通の課題を取り上げ、相互の関連性を検討することを目的とした。知的障害者の就業支援及び余暇支援における共通の課題は、支援者や共に活動する人との人間関係の構築に対する支援の不足であった。知的障害者と支援者との関係は、役割に依存し変化しやすい、あるいは、支援の場に限定されたものであった。今後、知的障害者における学校教育から就業への移行期において求められる支援は、役割や場に依存しない長期にわたり安定的な人間関係の構築を支援することであると考えられた。
  • 佐藤 亮太朗, 熊谷 恵子
    原稿種別: 原著
    論文ID: 22A008
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/08/23
    ジャーナル フリー 早期公開
    本研究は、学校欠席リスク群のスクリーニングと欠席のリスク評価を目標とする学校欠席リスク・スクリーニングテスト(STAR)の作成(研究1)と、欠席日数に関連する要因並びに学校欠席リスク群の臨床傾向(研究2)から構成されている)。対象は小学4~ 6年の児童225名であった。研究1では、STARの信頼性並びに収束的妥当性、判別的妥当性、並存的妥当性が示された。研究2では、遅刻日数や〈同級生との会話〉、〈援助要請〉、〈眠気〉、〈国語〉、〈宿題〉と欠席日数との関連が示された。さらに、登校状態にある児童において、学校欠席リスク群は他の児童よりも欠席日数及び遅刻日数が多く、STAR得点も高い傾向があることが示された。以上により、欠席の予防的取り組みにおける対象児や介入の優先順位が示唆され、STARのスクリーニングテストとしての活用が期待された。課題として、主観的な容態の評価方略の検討を挙げた。
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