特殊教育学研究
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早期公開論文
早期公開論文の9件中1~9を表示しています
  • 戸嶋 純那, 二宮 一水, 福田 奏子, 佐島 毅
    原稿種別: 原著
    論文ID: 21A024
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/08/16
    ジャーナル フリー 早期公開
    数の理解の基礎となる重要な概念の発達を促す系列化課題は、一見で全体を把握できる視覚による場合と継時的に知覚していく触運動感覚による場合で大きく異なる。本研究では、重ねることで順番の正誤がフィードバックされる入れ子課題を用いて触運動感覚による系列化課題を作成し、その難易度を検討することと入れ子課題の課題遂行方略を分析することを目的とした。分析は①入れ子課題の難易度、②難易度に影響を与える要因、③Piagetの系列化の発達段階と照らし合わせた方略の検討の観点から行った。その結果、入れ子3個より5個の方が、また入れ子を1つずつ手渡しで提示していくより同時に提示する方が難易度は高く、入れ子の数によって提示方法を検討する必要性が示唆された。また、入れ子課題による盲幼児児童の系列化の発達もPiagetの発達段階と同様の順序が見られた。本研究の知見は盲幼児児童の系列化の指導や評価に活用可能と考える。
  • 齊藤 彩, 原口 英之
    原稿種別: 資料
    論文ID: 23B042
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/08/16
    ジャーナル フリー 早期公開
    大学等の高等教育機関において、発達障害をはじめ障害のある学生への支援の必要性に関する認識は高まってきたものの、専門学校(専修学校専門課程)に焦点を当てた研究はきわめて乏しい。本研究では、全国280校の専門学校を対象に、障害学生支援の実態ならびに発達障害特性のある学生の在籍と支援に関する質問紙調査を実施した。その結果、障害学生支援の専門部署・機関や担当者の配置、対応要領・基本方針、規程等の策定、障害学生支援に関する活動や取組については、大学等と比べて未整備の学校がきわめて多い現状が確認された。診断を問わず発達障害特性のある学生については、8割近い専門学校に少なからず在籍していると捉えられていた一方で、学校生活のさまざまな側面における支援は十分に提供されていない学校もあることが示された。発達障害特性のある専門学校生への支援は発展途上にあり、さらなる整備、促進が今後の課題である。
  • 木村 芽生, 池田 浩之
    原稿種別: 原著
    論文ID: 23A010
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/08/01
    ジャーナル フリー 早期公開
    自閉症スペクトラム障害(ASD)のある者のきょうだいが同胞の障害を理解するプロセスを明らかにし、プロセスに影響を与えた要因について検討するために、知的障害を伴わないASDのある同胞がいる青年期のきょうだい3名に半構造化面接を実施し、複線経路・等至性モデルを用いて分析を行った。その結果、研究協力者は共通して、同胞の存在を障害の有無にかかわらず受け入れていったが、そこに至るプロセスは個々で異なり、様々な社会的影響を受けてきたことが明らかになった。また、青年期には自身の経験を統合しながら、同胞の障害や同胞との関係性、自分の将来、家族や社会の障害理解に関する多様な価値観を形成する可能性が示された。きょうだい支援においては、個々の背景を理解した上で、家族全体への包括的な支援を行うことが求められる。今後の課題は、事例研究をさらに蓄積していくことである。
  • 亀山 優佳, 細川 美由紀
    原稿種別: 原著
    論文ID: 22A021
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー 早期公開
    本研究では青年期の定型発達者を対象として,ASD(Autism Spectrum Disorder)傾向が高い者においてもASD者と類似した特性共感の困難が認められるかどうか,ならびにASD傾向が高い者でも,自身と性格特性が類似した他者に対してであれば状態共感は高まるのかについて検討することを目的とした。調査にはASD傾向を測るAQ(Autism Spectrum Quotient),特性共感を測るIRI(Interpersonal Reactivity Index),ある人物に対する状態共感を測る共感反応指標の3指標を用いた。その結果,ASD傾向が高い対象者は,ASD傾向が低い対象者に比べIRIの「共感的関心」得点が低かった。しかし自身と性格特性が類似した人物に対する共感反応指標における「共感的関心」得点は,類似していない人物に対するものよりも高かった。このことから,ASD傾向が高い者は,共感的関心における特性共感の困難が認められる一方で,自身と性格特性が類似した他者に対しての状態共感は高まる可能性があることが示唆された。
  • 石畑 亜巳, 藤原 直子, 井上 雅彦
    原稿種別: 資料
    論文ID: 22B036
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/05/18
    ジャーナル フリー 早期公開
    本研究では、発達上の課題や困難を有する非行少年との面接経験がある保護司8名に対して半構造化面接による調査を行い、保護司の困難感と活動に関するニーズを把握し、少年に対して適切な指導や援助を行うための課題について検討した。結果の分析にはKJ法を用い、面接の音声データを逐語録にして内容ごとに分類した。その結果、保護司の困難感やニーズは121ラベル、9つのカテゴリーに分類され、保護司の困難感として、少年の態度、コミュニケーション、面接設定の困難が挙げられた。保護司のニーズについては、発達障害についての研修、保護観察官からのサポートと連携、再犯防止にかかわる周囲の人間関係の重要性が示された。保護司が発達障害等の発達上の困難を有する少年に対して抱く困難感を軽減するための研修や地域連携の必要性について考察した。
  • 成田 まい, 佐藤 一葉, 中 知華穂, 小池 敏英
    原稿種別: 原著
    論文ID: 23A022
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/05/18
    ジャーナル フリー 早期公開
    文章読解の成績には、文字-音のデコーディングが影響し、日本語では漢字単語の読み成績の関与が強いことが報告されている。本研究では、要点読解の低成績を示す者のうち漢字単語の読み困難を伴う(A群)と伴わない (B群)を対象として、読解低成績の背景要因を多項ロジスティック分析により検討した。対象児は、小学校3~6年生1,107名である。目的変数はA群とB群の生起とし、説明変数は「だから」と「しかし」の接続詞テスト、語彙テスト、ひらがな単語の流暢な読みテスト、言語性 ワーキングメモリテストの低成績とした。読解低成績の背景要因として、3・4年生のA群では「だから」と「しかし」の低成績の重複が関与した。B群では「だから」の低成績のみが関与した。5・6年生では、接続詞低成績の関与が少なくなった。3・4年生では、論理の接続詞の選択で不全を示すために、文章の要点をまとめることが困難となる児童の存在が示唆された。
  • 藤田 知也
    原稿種別: 実践研究
    論文ID: 23P001
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/05/18
    ジャーナル フリー 早期公開
    反抗挑発症(Oppositional Defiant Disorder: ODD)は小児期に見られる精神行動障害として頻度が高く、公衆衛生上の重要な課題である。しかし、国内ではODDを対象とした症例の報告は少なく、特に家庭訪問による行動的介入を適用した実証研究は見当たらない。本研究は来所相談に困難を示す注意欠如・多動症と自閉スペクトラム症を併存する反抗挑発症の男児に対して、家庭訪問による行動的介入を子どもや保護者の介入受容度に応じて段階的に実施し、その効果を検証した。介入では、先行子操作、低頻度行動分化強化、代替行動の形成を行った。その結果、反抗的行動は減少し、代替行動が増加した。この効果は、1年後のフォローアップ期においても維持していた。このことから、ODDに対する家庭訪問による行動的介入および介入受容度に応じた段階的な介入の有効性が示唆された。
  • 伊藤 功, 青山 眞二
    原稿種別: 実践研究
    論文ID: 23P020
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/05/18
    ジャーナル フリー 早期公開
    本研究では、日常生活場面において行動コントロールに困難を抱える知的障害を伴う自閉スペクトラム症生徒1名を対象に、学校内の廊下歩行時に頻回に壁を蹴る行動の改善を試みた。対象生徒の移動に関する課題を整理したところ、授業参加を促進し、学習活動を保障するためには、教室移動を負担なくできることが重点課題になると判断した。そこで、指導第Ⅰ期から、廊下中央を歩行するように全面的な身体的なプロンプトを用いた指導・支援を開始し、段階的に支援の量を減らしていった。第Ⅲ期以降は、さらにトークン・エコノミー法を用いたことで、目的を持って歩行する行動が促されるようになった。最終的に一人で壁を蹴らずに廊下を歩行することができるようになったことから、指導方法の適切性が示された。また、社会的妥当性の結果から、廊下歩行場面における歩行の改善が、対象生徒のQOLの向上にもつながったことが示唆された。
  • 石田 基起, 石倉 健二
    論文ID: 22P050
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー 早期公開
    本研究は、全国の肢体不自由・病弱特別支援学校に多く在籍している重度脳機能障害を有する超重症児の教育的対応における不快状態評価に、鼻部皮膚温度が活用可能であるかを探索的に検討することを目的とした。対象児は、覚醒と睡眠の区別すら困難であった超重症児2名であった。教育実践から選定した教育的対応の鼻部皮膚温度を測定した。常時使用している心拍モニターによって得られる心拍値と鼻額皮膚温度を比較することで、評価の妥当性について検討を行った。その結果、情動換起に伴う鼻部皮膚温度の変動を取り出す処理によって得られた鼻額差分温度の低下と心拍の加速反応との間で、50%以上の生起一致率が認められた。また、生起が一致した刺激は聴覚・触覚刺激のカテゴリーに偏りが確認された。このことから、鼻部皮膚温度が超重症児の不快情動を引き起こす苦手な刺激を探索する際に活用しうることが推察された。
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