特殊教育学研究
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早期公開論文
早期公開論文の8件中1~8を表示しています
  • 林 恵津子, 鈴木 保巳, 寺田 信一
    原稿種別: 資料
    論文ID: 23B031
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー 早期公開
    里子の養育が困難になる主要因に、発達障害児や被虐待児のケアの難しさが指摘されている。里子と里親の支援体制整備のために、地域ベースで発達障害と被虐待経験を把握することを目的とした。里親に文部科学省の行なっている調査と同じ質問紙「不注意」「多動性-衝動性」「対人関係やこだわり等」への回答を依頼した。被虐待経験の有無にかかわらず、里子では全ての領域で文部科学省の報告よりも高いポイントに分布していた。被虐待経験のある里子の33.8%に「不注意」の著しい困難が、15.4%に「多動性-衝動性」の著しい困難が、25.4%に「対人関係やこだわり等」の著しい困難があることが明らかになった。里子の教育的支援はもちろんのこと、里親不調を防ぐために里親への支援も喫緊の課題である。また、社会的養護を必要とする者では、発達障害の可能性のある例が多いことを踏まえ、特別な支援を成人後も継続する支援体制が望まれる。
  • 尾川 周平, 河村 理怜, 小島 道生
    原稿種別: 資料
    論文ID: 23B025
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2025/02/14
    ジャーナル フリー 早期公開
    知的障害特別支援学校教員の職務満足感と主観的幸福感の実態及び関係性を解明することを目的とした。作成した職務満足感尺度を知的障害特別支援学校教員364名に適用して探索的因子分析を行ったところ、「職務意義への満足感」「同僚との関係性への満足感」「授業への満足感」「保護者との関係性への満足感」「職務環境への満足感」の5因子が得られた。重回帰分析の結果、職務満足感の下位因子である「職務意義への満足感」「授業への満足感」「職務環境への満足感」と主観的幸福感に正の関連が見られた。主観的幸福感を向上させるために、「職務意義への満足感」「授業への満足感」「職務環境への満足感」を高めることの有効性が示唆された。
  • 山中 冴子
    原稿種別: 資料
    論文ID: 23B033
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2025/02/13
    ジャーナル フリー 早期公開
    オーストラリアン・カリキュラム(以下、AC)は児童生徒の多様性に応じるべく設計されており、2022年から改訂版が公開されている。AC改訂では障害のある児童生徒の包摂に関わって、まず、多様な学びをより尊重する形で学習領域が見直された。次に、リテラシーとニューメラシーの「学びの進行表」が導入された。そして、汎用的能力をレベルに幅をもたせて学習領域に関わらせた。初等中等教育の権限を有する各州は、ACを工夫できる。ヴィクトリア州やニューサウスウェールズ州のカリキュラムは知的障害を意識した到達基準や学習内容を示すなどし、教員が知的障害のある児童生徒個々に合わせた実践を創造するための拠り所を提供していた。以上は、障害カテゴリーの内にある多様性に応じたカリキュラム策定を議論する際の参考になろう。今後は関係各所の反応から改訂ACと2州のカリキュラムの成果と課題を把握する必要がある。
  • 伊藤 敬市, 藤野 博
    原稿種別: 資料
    論文ID: 24-B001
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2025/02/13
    ジャーナル フリー 早期公開
    言語発達の遅れのある児童に対する文法指導の実態を明らかにするため、東京都のことばの教室が設置されている78の小学校にアンケート調査を行った。各校の代表1名の教員からオンラインで回答を得た。質問項目は在籍児の学年層や医学的診断、指導頻度と時間、指導場面、指導する文法項目、指導手続き、活動や教材、児童以外の助言や指導の相手、指導効果の評価法に関するものであった。有効回答は51件(65.4%)であった。回答から、言語発達の遅れがある児童は学年層を問わず文法指導を受ける割合が少ないことが明らかとなった。指導手続きはリキャストやモデリングなど自然なコミュニケーションを介した暗黙的指導がよく行われ、目標の文法規則に焦点化した明示的指導はあまり行われない傾向があった。また、現状より指導頻度や指導時間を増やすことや、個別指導に加えて学校生活に即した場での指導を行う必要性が認識されていることも示唆された。
  • 川井 拓郎, 村中 智彦
    原稿種別: 実践研究
    論文ID: 23P017
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/11/22
    ジャーナル フリー 早期公開
    小学校特別支援学級児童2名の物語作文において、絵カードや物語に関連した内容を発語する口頭作文、指導者の発問「どんな気持ち?」、仲間とのペア学習と板書を行い、文字作文における心的状態語の記述に及ぼす効果を検討した。フェイズ1のBL1では参加児が個別に取り組む文字作文を進める手続きを形成した。フェイズ2のBL2では指導者の援助を遅らせたり減じたりした。フェイズ3の介入1では口頭作文を導入し、フェイズ4の介入2では口頭作文に加えて指導者の発問「どんな気持ち?」を導入した。フェイズ6の介入3ではペアによる口頭作文と心的状態語の板書を導入した。介入の結果、フェイズ3、4、6において、2名の参加児で文字作文における心的状態語の記述が認められ、そのうち1名では介入3のペアによる口頭作文と板書で記述数が増加した。文字作文を書く直前に行う口頭作文、口頭作文での心的状態語の発語への指導者の言語称賛、登場人物の表情や状況に注目させる指導者の指さしが有効であることを示唆した。
  • 松岡 仁哉, 細谷 里香
    原稿種別: 実践研究
    論文ID: 23P034
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/11/22
    ジャーナル フリー 早期公開
    本研究は、小学校特別支援学級に在籍する2名の知的障害児を対象に、刺激ペアリング手続きを活用し、どのような漢字の読みの指導が児童の記憶に残りやすいのかについて検討を行うことを目的とした。用いた指導法は次の3つであった。プリントで漢字の読みを学習する方法、タブレット端末を用いて刺激ペアリング手続きを活用し、漢字の読みに基づく意味を表す絵が描かれた単純な絵刺激で漢字の読みを学習する方法、タブレット端末を用いて刺激ペアリング手続きを活用し、漢字ドリルに出てくるような短文を使用し、短文が示す状況が描写された絵刺激で漢字の読みを学習する方法。後者2つはタブレット端末を用いて実施した。指導の結果から、刺激ペアリング手続きを活用し短文刺激で学習する漢字の読みの指導法が、児童の記憶に最も残りやすい可能性が示唆された。
  • 藤田 知也
    原稿種別: 実践研究
    論文ID: 23P037
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/11/22
    ジャーナル フリー 早期公開
    本研究は、攻撃行動を伴うインターネットゲーム障害(Internet Gaming Disorder: IGD)の男児に対して、家庭訪問による行動的介入を行った。本介入では、安全面への配慮を前提としつつ、ゲームの利用時間に対して低頻度行動分化強化を適用し、また代替行動として登校行動の形成を図った。その結果、ゲームの利用時間の減少と登校率が増加し、攻撃行動は減少した。1年後のフォローアップにおいてもゲームの利用時間と登校率は安定し、攻撃行動は介入終了時の水準を維持していた。攻撃行動を伴うIGDに対する行動的介入の効果と課題について考察を行った。
  • 藤田 由起, 遠矢 浩一
    原稿種別: 原著
    論文ID: 24A002
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/11/22
    ジャーナル フリー 早期公開
    本研究の目的は、精神疾患の母親を有する人々に焦点を当て、学齢期にどのような環境でどのようなケア役割を取り、どのような精神的健康への影響を受けていたのかについて明らかにすることであった。精神疾患の母親と暮らした経験のある成人50名に質問紙調査を実施し、有効回答を得た。その結果、家庭でのケア役割の程度が高い場合、家族との関係性が両価的かつ共依存的なものになるリスクがあり、社会からの孤立感を抱えた中で悩みや不安を抱え続け、精神的健康に否定的影響を受ける状況に陥りやすいことが示唆された。よって、母親の病状の安定や、ケア役割の負担の軽減のための環境的支援、母親の病状の理解や「助けを求めてもよい」という考えの促進のための心理教育、家庭以外の心の拠り所や支えを作ることを目的とした心理的支援、社会への精神疾患に対するスティグマ払拭のための働きかけが、精神疾患の母親を有する子どもの支援に必要と考えられた。
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