特殊教育学研究
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海外生活経験を有する言語発達遅滞児について
石川 清明谷 俊治
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1979 年 17 巻 2 号 p. 33-41

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抄録

言語獲得期を海外で過ごしたことばに遅れをもつ子供の症例をとりあげ、海外生活経験が伝達行動の障害にどのような影響をおよぼしたのかを明らかにすることを目的とした。得られた主な臨床的知見は次のようであった。(1)乳幼児期から愛着行動の形成が不十分であったと考えられた。(2)渡航前に軽度の言語発達遅滞の存在が推測され、海外在住はそれらの問題を維持、促進させたと考えられた。(3)海外で集団適応に問題がみられた。(4)現地語をほとんど獲得しなかった。(5)海外での養育環境は、masked maternal deprivationの状態であったと考えられた。(6)母国語の発達遅滞は、2ヵ国語使用の環境よりも養育環境の影響を強く受けていたと考えられた。(7) 選択的緘黙症や食事の問題がみられ、その形成要因の1つに海外在住が関与していたと考えられた。(8)海外在住は、障害の早期発見、早期治療を遅らせた可能性のあることが指摘された。

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© 1979 日本特殊教育学会
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