抄録
本研究では、性質の異なる言語命名教示と言語化教示の相対的効果を総合的に検討するため、言語命名+言語化条件、言語命名条件、非言語教示条件の3条件を設定し、精薄児と健常児を対象に、弁別逆転移行後の成績について比較検討した。その結果、健常児は非言語教示、言語命名、言語命名+言語化の各条件の順に移行学習所要試行数が減少し、言語報告者の割合も増加したが、精薄児では、言語命名効果は健常児と同程度にみられるものの、言語命名+言語化による移行学習の促進効果は健常児に比べ小さかった。このことから、精薄児は言語命名により、次元性の媒介機能を形成するものの、適切次元内の正刺激と言語ラベルを結合させる教示を利用した、外的反応の制御に困難さのあることが示唆された。