抄録
短期記憶から長期記憶への情報の転送能力に優れた者は問題解決課題(Wickelgrenの6本の矢の課題)において良い成績を示すという仮定をたて、普通児とろう児を被験者にその研究を行った。情報の転送能力は直後自由(系列)再生実験から得られた系列位置曲線の初頭部位より求めた。普通児(小学1.2.3年生)においては系列位置曲線の初頭部位の想起量を基に想起量の多いグループと少ないグループが構成され問題解決課題の成績とのG-P分析が行なわれた。初頭部位の想起量が多いグループは問題解決で良い成績を傾向として示した。中等部ろう児は個人差が大きいので記憶課題と問題解決課題の成績が個別に検討され、記憶課題で初頭部位の想起量が多かった被験児は問題解決課題で良い成績を示した。また、普通児とろう児の間の問題解決課題の成績の差を情報処理的に検討・考察した。