抄録
ダウン症児の姿勢保持能力の特徴を把握するために開眼と閉眼の2条件で重心動揺を測定した。重心動揺は左右と前後方向の成分に分けて最大5Hzまで周波数解析し、パワー・スペクトルを求めた。ダウン症の被検児は男子8人、女子16人(平均年齢14歳、IQ21〜49)である。ダウン症児の重心動揺は0.2Hz以下の低周波成分を除き、全般的に健常児の重心動揺より大きなパワー・スペクトルを示した。さらに、ダウン症児の重心動揺は健常児と比較して、高周波成分を含むことが明らかとなり、ダウン症児の直立姿勢保持能力が低いことがわかった。この原因として、筋の低緊張と小脳の未発達、運動経験の不足が考えられた。また、ダウン症児は直立時の姿勢保持において開眼と閉眼の条件間に差が認められず、視覚系が直立姿勢を制御する場合に有効な情報となりえないことを指摘した。