抄録
精神遅滞児群(男子中学生17名)の握力を測定した。平均値は24.2kgであり、普通児群(73名)の34.1kgに比べて有意に低かった。筋力は筋の横断面積に比例するという法則があるので、握力を前腕囲あたりの値(kg/cm)に換算して比較してみると、精神遅滞児群は1.08kg/cmとなり、普通児群の1.46kg/cmより有意に低い値となった。このことは、もっている生理機能を筋力として発現する能力が低いということを意味する。そこで今回は、もっている生理機能を外部に発揮する能力を高めるということに焦点をあてたトレーニングを試みた。トレーニング内容は「鉄棒ぶら下り運動」で、これにより全力を出すという感覚を経験させた。20日間のトレーニングの結果、前腕囲あたりの握力の値は1.08kg/cmから1.18kg/cmへと有意な増加を示した。このことから「もっている能力を発揮する能力」を高めるという観点からのトレーニングも有意義であることが明らかとなった。