抄録
精神遅滞児は、他者の身体運動・運動動作を「みて」、「まねる」ことに弱さがみられる。本研究は、精神遅滞児の身体運動模倣の発達を、モデルとして呈示される姿勢・動作の視覚的要因および運動出力要因との関連に着目して検討し、そこから身体運動模倣を可能にさせている基礎的能力を探ることを目的とした分析的試みの一つである。モデルとした身体運動は、そのモデルのもつ視覚的「みえ」の性状から「みえ」が平面視的構造をもつ姿勢・動作と奥行視的構造をもつ姿勢・動作、運動形態から左・右腕同型と異型の姿勢・動作とに分類し設定した。その結果、視覚的「みえ」の性状および運動形態の差異によって、その模倣の獲得時期や発達の様相が異なることが明らかになった。そして、これらの結果を他の先行研究の知見とも関連させて検討し、身体運動模倣における発達的順序性についての仮説的提起を行った。