特殊教育学研究
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音韻論的アプローチによる精神遅滞児の言語指導に関する研究
碓井 惠夫
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1992 年 30 巻 3 号 p. 1-7

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抄録

一語発話の初期にある精神遅滞児に、どのようなことばを、どのような方法で指導したらよいかという課題がある。そこで言語指導の指針となる言語モデルを求めた。対象児がすでに産出していた一語発話について、音素/p/と/m/が分化していたことに示唆され、対立した音素が一定の順序で分化していく、というJakobsonらの弁別的特徴理論による音素体系発達の法則に着目した。対象児の全体的発達を促す過程でこの言語モデルを応用した。音素分化の順序性に配慮し刺激言語を精選した。言語刺激を受けないで産出された語も多数あった。/t/習得が著しく遅れ、音素発達の順序性に大幅な揺れを生じた。しかしこの間に音韻論、意味論、統語論上の興味ある発達を遂げた。日本語の発話リズムの習得、継起的一語発話に関する意味発達と文法認識について論じた。言語刺激の方法に難点もあったが、対象児は大筋において普遍的な言語発達の道筋をふんだものと認められた。

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© 1992 日本特殊教育学会
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