特殊教育学研究
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重度精神遅滞児における描画活動の事例的研究(実践研究特集号)
室橋 春光広川 香
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1994 年 31 巻 5 号 p. 23-29

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抄録
重度精神遅滞児を対象として、描画活動の援助法を検討した。対象児に絵の具をつけた筆を持たせると、四角に縁取り内部を塗る動作を繰り返した。これは、作業学習で指導された糊づけ作業の般化的行為と考えられた。そこで対象児が、四角を利用した描画パターンを描けるようにし、それを彼の好きなバスに見立てるよう援助した。最初に、描画援助者を共に描く存在として理解してもらうこと、次に対象児と援助者が交互に描画する関係を作ることを試みた。そして、援助者が「バス」と言いながら、対象児の描いた四角の下部に小円を2個、直ちに描き加えた。当初、対象児は援助者の行為を無視したが、小円が加えられるのを待つようになった。さらに、対象児自らが小円を描き加え、バスに見立てることを試みた。彼は、「バス」と言いながら、描くようになった。その後、対象児が情緒的に不安定なときにこのパターンを描くと、安定することも観察された。
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© 1994 日本特殊教育学会
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