1995 年 32 巻 5 号 p. 69-73
教育実践を、係わり手と子ども相互の見方と行動の革りをたすけあう過程として捉えていく、という立場から、常同行動を示し、コミュニケーション活動の初期状態にあった、運動障害を合せ持つ一女児(M)との約10年にわたる係わり合いの経過を取り上げ、そこから得た知見を報告した。当初、Mの行動観察から探索活動が極めて不活発な状態にあることに着目し、探索活動の促進を目的とした係わり合いを開始したが、間もなく働きかけに対する明確な拒否が生起するようになった。そこで方針を再検討し、係わり合いにおける問題は相互信頼関係の形成であると捉え直して実行したところ、関係が進展するにつれ常同行動が減少し、逆に探索活動が活発化していった。この経過から、常同行動、探索活動、相互信頼関係の三者関係について検討を加えた。さらに相互信頼関係における「柔らかな接触と声掛け」による呼応の役割、カウンセリング的視点の必要性について整理した。