脳性まひ児の運動機能改善を促す訓練技法を発展させていくためには、脳性まひ児の運動発達に関する体系的知識や訓練の実施に伴う変容の可能性を予測するための客観的データが必要である。そこで本稿では、脳性まひ児の歩行獲得にかかわる諸要因や運動発達経過を扱った研究を概観するとともに、訓練効果を検討した研究を方法論上の問題と絡めて整理した。その中で(1)脳性まひ児の歩行獲得には反射活動・姿勢反応や粗大運動の獲得時期等の要因が関与し、これらの要因による予後予測が2歳でほぼ可能なこと、(2)脳性まひ児の移動パターンや動作発達の基本要素の分析によれば、四つ這い、うさぎ飛び、いざりパターンを経て歩行が獲得されうること、また動作発達には膝立ち位における抗重力動作の獲得が重要であること、(3)脳性まひ児の多様な運動発達に対応した訓練効果については、研究デザインや評価測度の問題を考慮しながら今後さらに検討が必要なこと、が指摘された。