2000 年 37 巻 5 号 p. 69-77
音楽が発達障害児の治療教育に利用される時、身体的運動を誘発したり、子どもの表現やコミュニケーションの手段に使われる。本研究は、自傷行動を有し、歩行困難な重度・重複障害幼児に対して、即興音楽及び既成音楽を導入した活動を行い、その際の対象児の行動を量的研究方法を用いて測定した。その結果、両音楽条件下において適切な自発的行動が増加した。即興音楽条件下においては、身体を動かす行動が多く見られ、特に膝立ちで部屋の中を移動したり、ピアニストや保母に接近する行動が増加した。既成音楽条件下においては、心身の安定した状態を維持する様子が見られ、楽器演奏行動が増加した。また曲の変わり目でピアニストや保母に笑いかけることが多々観察された。また、自傷行動は、両音楽条件下において減少したが、特に音楽を適切な自発的行動にのみ強化刺激として導入した第2指導期において皆無となった。