2001 年 38 巻 5 号 p. 119-127
本研究では、(1)前後左右4方向からの対人距離を指標とし、健常児のパーソナル・スペースの発達的変化をとらえた。(2)障害児と健常児の比較を行い、障害特性、交流教育の影響、社会的成熟との関連の3点から検討した。通常学級118名と特殊学級および通級指導教室60名の児童を対象とした。被接近者に近づくstop-distance法を用い、あいさつ時の対人距離を測定し、以下の結果を得た。(1)健常児のパーソナル・スペースは、前方が他のすべての方向に対して長く、左右差を示さない異方的構造を示した。中学年で最長となり、高学年で最短となる山型の発達的変化を示した。性差は高学年で認められた。(2)障害児は健常児と比較し、前後左右の対人距離がすべて短かった。交流時数が週当たり5時間を超えると、障害児のパーソナル・スペースは、健常児に近づいていった。社会生活年齢6歳を境にして、障害児のパーソナル・スペースの発達的変化は著しかった。