抄録
1.ビネー検査における「ちらばり値」は年令の進むにつれて増大するが、統制群のIQ70以上およびてんかん群のIQ70以下ではCA9〜10才を頂点時とするが、てんかん群IQ70の以上では5〜8才にみられ以後減少する傾向がある。2.てんかん群は、CA、MAともに2才のずれで「ちらばり値」の増大がみられる。3.IQ段階別ではてんかん群のIQ110以上のものを除き、「ちらばり値」はてんかん群の方がむしろ小さい。4.通過困難検査項目は年少の脳障害児では動作性検査に多く困難がみられるが、言語記憶、数操作、語彙検査にも困難が認められた。しかし、年長にいたると正常児の成績に近づく傾向がある。5.WISCでの下位検査項目の困難はMA4〜9才まではV1、V4、V5にみられ、4〜15才までを通じて相対的にP11で劣った成績が示された。6.IQ段階別ではIQ70〜89でV4が特に劣り、IQ110ではV1、V2が特にすぐれたばかりでなく、V1〜V6を通じて10以上の評価点を示した。P11は全般的に低い得点を示したが、その他のP検査についてIQ110以上ではすべて10以上の評価点をえた。7.言語性検査IQと動作性検査IQの比較からは、MA、IQ段階を通じて特に顕著な一般的傾向がなかったが、MA7〜9才、IQ90〜109で明らかに高い動作性IQを認めた。下位検査IQ間の差を±10としたとき、VIQ=PIQのものが42.1%を占めることが示された。8.IQ変動についてみると、PIQがVIQよりも早期に改善をあらわすことが示された。9.てんかん児と脳損傷児との間でその成績に明瞭な差異をみなかった。