読みの学習は音韻スキルに依存していることが知られている。読みが未熟な段階は音韻処理が未熟であると考えられるため、複雑な音韻処理を必要とする構造において困難さを示すと予測される。乳幼児は、産出および知覚において、LH(軽音節+重音節)よりもHL(重音節+軽音節)の音節量構造をもつ語を好む傾向があることが指摘されている。本研究の目的は、読みが未熟な幼児(逐次読み群)はHLよりもLHの読みが困難であるが、読みが熟達した幼児(流暢読み群)はこの差がなくなるという仮説が正しいかどうかを検討することであった。対象は5~6歳の定型発達児30名であった。刺激語は音節量構造がHLとLHの2種類であった。本研究の結果、平均反応潜時と平均音読時間において、逐次読み群ではLHに比してHLが有意に短かった。一方、流暢読み群では、LH とHLに有意差が認められなかった。これらの結果は、われわれの仮説を支持するものであった。