2011 年 49 巻 4 号 p. 339-350
本研究は、音声言語をおもなコミュニケーション手段とする聴覚障害幼児を対象に、健聴母親とのコミュニケーションと遊びを検討し、母子相互作用の発達的特徴を明らかにすることを目的とした。1歳から3歳の先天性重度聴覚障害幼児とその健聴母親26組の、母子で自由に遊ぶ場面での遊びレベルとコミュニケーション手段、機能、ターンについての分析を行った。研究の結果、聴覚障害1歳児では、物を中心とする遊びの中で、母親主導の母子相互作用が行われ、聴覚障害2歳児の遊びでは、健聴児よりやや遅れる傾向があるものの、コミュニケーションの質的変化により、1歳児とは異なる母子相互作用が行われていた。また、聴覚障害3歳児の遊びでは、健聴児と同等のレベルでの、活発な母子相互作用が行われることが示された。総じて、聴覚障害幼児は1歳から3歳にかけて、コミュニケーションが拡充され、同時に遊びの内容も深まり、母子相互作用が量的・質的に広がっていく発達的傾向が示された。