特殊教育学研究
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読話成績に及ぼす手がかりの影響について
中野 善達
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1968 年 5 巻 2 号 p. 22-31

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抄録

読話内容に関する手がかりが、読話成績に如何なる影響を及ぼすかを明らかにするため、ろう及び高度難聴児を被験者とした2つの読話実験を行った。実験Iでは刺激をface-to-faceの場面で与え、実験IIでは映画を作成して読話させた。手がかりは読話内容を示した絵を提示することであった。被験者を2群に分け、一方に手がかりを与えて、他方は手がかりなしで読話させ、3ヶ月後、前者と後者の手がかりの有無を逆にして、同じ文章を読話させた。その結果、以下のことが言える。1)読話内容に関する手がかり(絵の提示)がある場合、ない場合より、より良く読話が遂行される。face-to-face場面でP<.001映画でP<.052)読話内容についての手がかりが、読話者の読話明瞭度に対する影響の程度は、読話成績上位者よりも、下位者に対して著しい。3)同一被験者においては、手がかりの有、無に関係なく読話明瞭度の順位は恒常である。両者の間にはrs=0.93というきわめて高い相関が存ずる。4)face-to-face場面での読話と、映画による読話との間に0.699という相間係数が得られた。条件統制の上からも映画による読話検査が妥当性を有すると思料せられる。5)scoringの単位として文節が適当であるらしい。6)本実験の文章の読話明瞭度と中野による無意音節読話明瞭度との間には高い相関関係が認められた。7)文章によって読話の難易度に大きな差が存ずる。文長がこの規定因の一つであることが示唆されがた一義的な結論が下せない。本論文は尾島碩心教授、丸山隆氏と筆者による共同研究に基づくものであり、その一部は以下に発表された。中野善達、尾島碩心、丸山隆:視覚的場の手がかりが読話成績に及ぼす影響について日本応用心理学会27回大会。

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© 1968 日本特殊教育学会
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