特殊教育学研究
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L. ウィトマーの学業不振・非行問題への認識と臨床的対応
―心理クリニックでの実践から―
吉井 涼
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2013 年 51 巻 1 号 p. 11-20

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抄録

20世紀初頭のアメリカ合衆国において、精神薄弱ではないが学業・行動に逸脱を示す子どもに対し、臨床的対応を試みたL. ウィトマー(Lightner Witmer, 1867―1956)と彼の心理クリニックに焦点をあて、その来談児の実態と対応を検討した。継続的指導の対象児は正規学年への復帰可能性があり、その逸脱の主たる要因は環境的・身体的な問題であった。ウィトマーは、家庭や専門機関との協力を重視し、継続的な診断に基づいた個別的指導を実施した。また、公立学校の夏期休暇中に実験的な特殊学級を開設し、心理クリニックの来談児から選別された子どもに対して、より集中的な診断と指導を実施するとともに、集団的指導の方法論の構築を試みたウィトマーであったが、精神薄弱と学業不振の分類の難しさによって、正規学年へ復帰できる子どもに特化した実践には至らなかった。心理クリニックは、個別指導によって一応の成果を上げたが、集団に対する診断・指導方法の構築は困難であった。

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© 2013 日本特殊教育学会
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