抄録
本研究では、聴覚障害児における漢字の読みの発達と、それに関連する要因を明らかにするため、特別支援学校(聴覚障害)中学部1~3年に在籍する聴覚障害児41名、および中学校1~3年に在籍する健聴児96名を対象に、漢字の読みのテストを行った。漢字の選定には、各漢字の画数、心像性、一貫性、出現頻度、同音異義語数を指標として用いた。健聴児、聴覚障害児ともに、学年発達に伴って漢字の読みの習得が進み、発達の傾向は両群でおおむね同じであったが、健聴児に比べて聴覚障害児は習得が遅れることが明らかとなった。特に、健聴児と聴覚障害児の間では一貫性の要因に違いがみられ、一貫性が低い漢字では、健聴児と聴覚障害児で正答率に大きな差がみられた。この差は、漢字には複数の読み方があり、それらの読み方の種類やその違いによる語彙の異なりなどに対する知識の差異に起因すると推察された。聴覚障害児は、このような漢字の複数の読みの知識が広がりにくく、結果として漢字の読み習得が健聴児に比べて遅れるのではないかと考えられる。