抄録
18歳の知的障害を伴う自閉症男子に対して、書字を用いた要求言語行動の形成を目指して、家庭において、家族が機会利用型指導法による指導を行った。その般化の状態から、物品および社会的機能の般化を可能にするための要件について検討することを目的とした。その結果、対象者は書字を用いた要求言語行動の習得が可能となった。また、日常場面において要求語とした3物品名以外にも書字による要求語等が30語表出され、そのうち書字できることが確認されていた単語は26語、新たに書字が確認された単語は4語であった。さらに、「要求」「応答」以外にも「叙述」「呼びかけ」の機能をもつ言語行動が表出された。一方で、単語の語頭音による言語行動が3度観察された。これらの結果から、物品の名称の書字練習は後の日常場面での般化を可能にするための必要条件となるか否か、また、形成された言語行動が「要求」「応答」だけでなく他の機能にまで般化した要因などについて検討がなされた。