2021 年 59 巻 1 号 p. 11-24
本研究は、知的障害者95名を対象として、目標志向性と就労における自己調整方略および職務満足感の関連を検討した。因子分析の結果、目標志向性として「マスター目標志向性」と「パフォーマンス目標志向性」が、職務満足感として「外在的職務満足」と「内在的職務満足」が、それぞれ抽出された。パス解析の結果、(1)メタ認知的方略の「柔軟的調整」が行動・環境の調整方略を規定することが示唆された。(2)目標志向性と就労における自己調整方略の関連について、マスター目標志向性は「目標設定」と「柔軟的調整」及び「作業方略」と正の関連を有するほかは、「柔軟的調整」を媒介して間接的に行動・環境の調整方略を予測していると考えられる。(3)就労における自己調整方略と職務満足感の関連について、「援助要請」と「作業方略」は職務満足感と正の関連を有していた。また、目標志向性は職務満足感と正の関連を有するほかは、「援助要請」と「作業方略」を介して間接的に職務満足感を予測していると考えられる。したがって、知的障害者の職務満足感の向上に向けて、就労における自己調整方略に対する支援の重要性が示唆された。