特殊教育学研究
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脳性まひ児における鏡映文字の出現と利き手の関連について
小川 義博
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1972 年 9 巻 3 号 p. 36-46

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抄録

CP児に鏡映文字を書くものが多いことと、利き手の判断に困難を感じることを経験してきた。本研究においてこれらの2つの観点からCP児の書字について検討した。研究方法としては、日常書字している側の手で自分の名前をひら仮名で縦に書かせ、次に反対側の手で前に書いた字をみせないで、同じく名前を書かせた。被験者は5才1ヶ月から14才7ヶ月までのCP児104人であった。(平均年令8才9ヶ月)病型は72人がSpastic、32人がAthetoticであった。同年令範囲の脳器質疾患のない肢体不自由と正常児74人を比較対象児とした。結果としては次の5点のことが得られた。(1)鏡映文字はCP児に多く、しかもSpastic児にだけみられた。(2)左手で書字する児童がCP児に多くみられた。(3)日常書字していない側の手で書字すると反対側で書いた字と鏡映関係になる文字を書く児童がCP児には年令にかかわりなく非常に多く、非CP児には少なかった。(CP54.8%、非CP3.7%)しかもAthetotic型よりSpastic型に多く見られた。(Athetotic型12.5%、Spastic型73.6%)(4)知能指数と左手、右手で文字が鏡映関係になることとは関連はなかった。(5)CPの原因と左手、右手で文字が鏡映関係になることとの関連は仮死、早期破水、黄疸とはなく、在胎期間の短かいこと(29週以下)、生下時体重の小さいこと(2000g未満)と関連があった。未熟児に成熟児より多くこの傾向があった。本研究の結果はCP児のうち、Spastic型に鏡映文字と左手、右手で鏡映関係に字を書く傾向があることを示した。このことはCPの知覚障害と関係があるだろう。更に、CP児に、障害をもった手と利き手との関係、利き目と利き手の関係、利き側の確立程度等に混乱があるといわれ、これらのことが一般に書字障害の一因であるといわれていることを考えると、大脳半球優位性(利き側)の問題との問題との関連性を示唆していると考える。

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© 1972 日本特殊教育学会
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