糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
症例報告
糖尿病性筋萎縮症の経過中にバセドウ病を発症した1症例
山本 繁樹武原 英樹河島 隆士藤本 裕司
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 48 巻 11 号 p. 803-807

詳細
抄録

症例は75歳, 男性. 2001年12月頃から歩行困難が出現. 2002年10月以降は杖つき歩行となった. 2003年4月頃には自立歩行も困難となり, 同年5月に三菱化学病院を受診. 受診時, 著明な大腿筋の萎縮を認めたが, 各種筋逸脱酵素は正常であり, 大腿部MRIでは炎症を示唆する所見を認めず, 筋炎は否定的であった. 筋電図では萎縮を呈した大腿四頭筋では明らかな異常はなく, 神経伝達検査では両側大腿神経の遠位潜時が延長, 腓骨・脛骨神経所見は末梢神経障害を示したことから, 大腿筋の萎縮については神経原性変化によるものと思われた. 神経障害の原因として伝導障害の出現はなく, 萎縮が大腿四頭筋に限局していること, 受診時の血糖コントロールが不良であること (HbA1c 10%前後), および甲状腺機能は正常であることから糖尿病性筋萎縮症と診断した. 尿中CPR低値のためインスリン療法を開始し, 血糖コントロールが改善するに伴い, 杖つき歩行から自立歩行も可能となった.
しかしながら, 2003年10月にはガワーズ徴候と動悸, 手指振戦が出現, 検査にてTSH 0.002mU/l 未満と低値, FT3 16.2pg/ml, FT4 5.7ng/dl, TRAb 42.0%, TSAb 518%と高値を認めたことから, バセドウ病と診断, 抗甲状腺薬の投与を開始した.
糖尿病性筋萎縮症の原因を免疫異常とする報告が散見されるが, 本例においても自己免疫性甲状腺疾患をその経過中に発症したことから何らかの自己免疫異常の可能性を示唆する.

著者関連情報
© 2005 一般社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top