糖尿病
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症例報告
イレウスを併発し向精神薬の中止で悪性症候群を呈したアルコール性精神病を伴う2型糖尿病の1例
小河 淳平松 真祐渡辺 聴正木村 美嘉子浅野 有吉住 秀之
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2006 年 49 巻 10 号 p. 801-804

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抄録

症例は54歳男性.35歳よりアルコール性精神病のため,近医で向精神薬(エスタゾラム,クロルプロマジン,ハロペリドール,カルバマゼピン,ビペリデン)の内服を継続していた.10年前に糖尿病を指摘され,現在はインスリン療法を受けている.5年ほど前より頑固な便秘症が存在していた.2005年6月中旬頃,数日間排便がなく嘔気,気分不良が出現.その後嘔吐も加わり当科に緊急入院となった.腹部X線写真にて小腸ガス像,鏡面像を認めイレウスと診断し,向精神薬も含めて内服薬は中止,絶飲食とし輸液管理を行った.消化器症状は軽快傾向を示したが,入院数日後より発熱,意識レベルの低下,上下肢の筋硬直,血清CPK値の上昇,発汗過多および無言無動を認め,悪性症候群と診断した.精神科へ転科のうえダントロレンナトリウムの点滴を開始し,徐々にこれらの症状の改善を認めた.今後向精神薬を内服している,合併症を有する糖尿病患者の増加が予想され,このような場合,悪性症候群の発症に十分注意する必要があると考えられた.

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© 2006 一般社団法人 日本糖尿病学会
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