糖尿病
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49 巻, 10 号
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会長講演(第49回日本糖尿病学会年次学術集会)
受賞講演
原著
  • 小川 洋平, 南 昌江, 内潟 安子, 岩本 安彦
    2006 年 49 巻 10 号 p. 783-789
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    血糖自己測定(SMBG)の頻度や経験年数,SMBGに関する知識が血糖コントロールの良否に及ぼす影響を明らかにする目的で,糖尿病患者314名(1型215名(以下1型群),2型99名(以下2型群))にアンケート調査を行った.「SMBGの説明内容」は「操作方法」が1型群86.0%, 2型群78.8%と最も多く他の項目は3~5割ほどであった.「血糖測定器の精度の確認」は両病型群とも約6割がしていなかった.両病型群ともHbA1Cとインスリン注射年数,SMBG経験年数,測定チップ使用枚数とに相関はなかった.両病型群とも「測定値の予測」の有無でHbA1C値に有意な差はなかった.血糖コントロールをよりよくするための血糖値予測は,意識的にトレーニングする必要があると考えられた.SMBGの指導はSMBG開始時だけでは不十分なことがあり,SMBG経験が長い患者にも手技や活用法,機器の精度管理を再度確認する必要がある.
症例報告
  • 相澤 茂幸, 岡本 新悟, Mohammed Selim Reza, 池中 康英, 榑松 由佳子, 森本 有加里, 小島 邦行, 加藤 佐紀 ...
    2006 年 49 巻 10 号 p. 791-795
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は35歳の女性.繰り返す低血糖の精査のために入院した.75 g経口ブドウ糖負荷試験(75 g OGTT)直後から高血糖に移行し,インスリン治療を開始することになった.低血糖時の血中インスリンは高値であり,一方高血糖に移行した後の尿中C-ペプチドは著明低値であった.インスリンの頻回注射でも患者の血糖コントロールは困難でbrittle型を呈している.発症が急激であり,膵ラ氏島関連自己抗体が陰性であったことから劇症1型糖尿病が疑われた.しかし膵外分泌酵素の上昇は全く認めず,また病歴から発症前の耐糖能異常があった可能性も考えられた.明らかな診断に至らなかったものの,低血糖の精査入院中,糖負荷試験を契機に1日で高血糖に移行するという劇的な経過を観察し,劇症1型糖尿病(以降劇症1型)の亜型とも捉えられる貴重な症例と考え報告する.
  • 田中 正巳, 中村 博志, 岡村 ゆか里, 宮崎 康
    2006 年 49 巻 10 号 p. 797-800
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    高血糖性高浸透圧性昏睡(HHNC)を5例経験した.4例は73歳以上の高齢者であり,残りの1例は66歳であるが,認知症が重度で,意思の疎通が著しく困難な症例であった.発症の誘因として,全例感染症が関与していた.3例では中心静脈栄養や経腸栄養中にHHNCを発症した.インスリン治療を考慮したが,日中独居などの理由から断念した例が3例あった.5例とも著しい高血糖にもかかわらず,自ら口渇を訴えることはなかった.そして日中独居,脳梗塞,認知症などのため,症状の発見が遅れ,高血糖が重症化し,HHNC発症に至ったと考えられた.高齢,独居,脳梗塞,認知症の糖尿病患者はHHNCのハイリスク群として捉え,慎重に管理する必要がある.またHHNC予防のため,家族への協力要請や介護保険制度の活用も必要である.頻回の安否確認や服薬管理,また可能ならば在宅でのインスリン注射,血糖測定,検尿も有効と考えられる.
  • 小河 淳, 平松 真祐, 渡辺 聴正, 木村 美嘉子, 浅野 有, 吉住 秀之
    2006 年 49 巻 10 号 p. 801-804
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性.35歳よりアルコール性精神病のため,近医で向精神薬(エスタゾラム,クロルプロマジン,ハロペリドール,カルバマゼピン,ビペリデン)の内服を継続していた.10年前に糖尿病を指摘され,現在はインスリン療法を受けている.5年ほど前より頑固な便秘症が存在していた.2005年6月中旬頃,数日間排便がなく嘔気,気分不良が出現.その後嘔吐も加わり当科に緊急入院となった.腹部X線写真にて小腸ガス像,鏡面像を認めイレウスと診断し,向精神薬も含めて内服薬は中止,絶飲食とし輸液管理を行った.消化器症状は軽快傾向を示したが,入院数日後より発熱,意識レベルの低下,上下肢の筋硬直,血清CPK値の上昇,発汗過多および無言無動を認め,悪性症候群と診断した.精神科へ転科のうえダントロレンナトリウムの点滴を開始し,徐々にこれらの症状の改善を認めた.今後向精神薬を内服している,合併症を有する糖尿病患者の増加が予想され,このような場合,悪性症候群の発症に十分注意する必要があると考えられた.
  • 中村 晋, 内田 大学, 高橋 良枝, 龍野 一郎
    2006 年 49 巻 10 号 p. 805-808
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    塩酸バラシクロビルは,アシクロビルのプロドラッグでその副作用として過量投与による腎不全がある.今回,糖尿病腎症2期にて微量アルブミン尿を認める糖尿病で,塩酸バラシクロビルが原因と考えられる急性腎不全を発症した症例を経験した.症例は75歳の男性で,高血圧症と糖尿病で治療中であった.2004年8月に背部の帯状ヘルペスを発症し,塩酸バラシクロビルの内服を開始したところ急性腎不全を発症した.急性腎不全は塩酸バラシクロビルの内服中止と補液にて改善した.本症例では,もともと糖尿病腎症は2期と軽度であったが,塩酸バラシクロビルの常用量で急性腎不全を発症しており,使用する際には腎機能に注意して慎重に行う必要があったと考えられた.
  • 久保田 憲, 飛鳥田 菜美, 片柳 直子, 村上 徹
    2006 年 49 巻 10 号 p. 809-814
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は1962年生まれの女性.C型慢性肝炎に対し1999年7月から6カ月間,インターフェロン(IFN)を投与された.2002年5月に糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を来たしてインスリン治療を行ったが,血糖値(mg/dl)は2001年末まで110以下,DKA発症の4カ月前154, 2週前327, 発症時568であった.その後インスリン依存状態となりインスリン量は52単位/日まで増加した.抗GAD抗体,ICA, IA-2抗体が陽性で1型糖尿病と診断された.抗GAD抗体はIFN療法の途中まで陰性,終了直後の2000年1月に23.3 U/mlと陽性化し,糖尿病発症まで陽性が持続した.1型糖尿病の疾患感受性を示すHLAクラスII抗原DRB1*0901・DQB1*0302・DQB1*0303を有した.IFN療法に際し,GAD抗体のスクリーニングによる1型糖尿病の発症予知と二次予防の可能性を示唆する症例と考えられる.
コメディカルコーナー・原著
  • 小林 邦久, 中島 直樹, 井口 登與志, 西田 大介, 田中 直美, 星乃 明彦, 濱田 倫朗, 小妻 幸男, 中熊 英貴, 松下 龍之介 ...
    2006 年 49 巻 10 号 p. 817-824
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    糖尿病の外来診療では,治療の方法・合併症の重症度・糖尿病に対する知識の修得度などの多数の患者パラメーターに応じて,外来における検査の種類および頻度や教育指導の内容および回数などをガイドラインに準拠して変えなければならない.しかしながら,病状の変化やガイドラインの改定,新しい検査技術の導入に適切に対応し続けることは特に非糖尿病専門医にとっては多大な労力がかかり,現実的には困難である.そこでわれわれは,患者の個別性に応じて糖尿病診療ガイドラインに則った標準的外来診療を支援するためのアウトカム指向型糖尿病地域医療連携クリティカルパスを開発した.定期的な検査を記載した基本シートと個々の合併症や知識習熟度ごとに種類や頻度を変化させた検査を記載したオプションシートとを重ね合わせて,個人に適合したクリティカルパスを完成させる「重ね合わせ法」を考案した.年間の診療スケジュール表であるオーバービューと1回の外来ごとの検査予定表である通院日クリティカルパスおよび患者に送付する結果報告書書式をあわせて作成した.疾病管理事業カルナプロジェクトにおいて,同意を得た外来糖尿病患者に対して現在試験運用中である.
委員会報告
  • 糖尿病関連検査の標準化に関する委員会 , 富永 真琴, 牧野 英一, 芳野 原, 桑 克彦, 武井 泉, 青野 悠久子, 星野 忠夫, 梅本 ...
    2006 年 49 巻 10 号 p. 825-833
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    ヘモグロビンA1C (HbA1C)測定の国際標準化は国際臨床化学連合(International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine,IFCC)が提唱する方法(IFCC法)で,近い将来達成されることが予想されているので,IFCC値によるHbA1Cの基準範囲の設定を試みた.また,グリコアルブミン(GA)の基準範囲の設定も同時に行った.今回の基準範囲の設定に用いた基準母集団は山形県舟形町の糖尿病検診など4つの検診の受診者(699名(男性363名,女性336名),年齢:23~91歳)である.これらの受診者はすべて75 g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を受けた.HbA1C(IFCC値)の測定はHbA1C測定用の実試料標準物質であるJDS Lot 2に付されているIFCC表示値で校正した2種のHPLC法と2種の免疫法(いずれも日常検査法)を用いて行った.4つの測定値に相互に差異は認められなかったので,平均値を個人の測定値とした.GAの測定は酵素法で行った.基準個体の選別にあたってはNational Committee of Clinical Laboratory Standards(NCCLS)が薦める手順に従った.重回帰分析により,HbA1C(IFCC値)およびGAに対して,年齢,性別,また,質問紙法により得た「健康だと思うか」など検査値に影響を及ぼす可能性がある8項目の情報,ならびに身長,体重,血圧など身体計測値,さらにヘモグロビン,総蛋白などの検査値も有意な関連がないことを確認した.空腹時血糖値が110 mg/dl未満かつOGTTの2時間血糖値が140 mg/dl未満の条件を満たすOGTT正常者のみを基準個体とした.さらに潜在異常値除外法により,基準個体の絞込みを行った.最終的にべき乗変換を利用したパラメトリック法により,HbA1C(IFCC値)およびGAの基準範囲はそれぞれ3.0~4.1%,12.3~16.9%と設定された.
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