ヘモグロビンA
1C (HbA
1C)測定の国際標準化は国際臨床化学連合(International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine,IFCC)が提唱する方法(IFCC法)で,近い将来達成されることが予想されているので,IFCC値によるHbA
1Cの基準範囲の設定を試みた.また,グリコアルブミン(GA)の基準範囲の設定も同時に行った.今回の基準範囲の設定に用いた基準母集団は山形県舟形町の糖尿病検診など4つの検診の受診者(699名(男性363名,女性336名),年齢:23~91歳)である.これらの受診者はすべて75 g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を受けた.HbA
1C(IFCC値)の測定はHbA
1C測定用の実試料標準物質であるJDS Lot 2に付されているIFCC表示値で校正した2種のHPLC法と2種の免疫法(いずれも日常検査法)を用いて行った.4つの測定値に相互に差異は認められなかったので,平均値を個人の測定値とした.GAの測定は酵素法で行った.基準個体の選別にあたってはNational Committee of Clinical Laboratory Standards(NCCLS)が薦める手順に従った.重回帰分析により,HbA
1C(IFCC値)およびGAに対して,年齢,性別,また,質問紙法により得た「健康だと思うか」など検査値に影響を及ぼす可能性がある8項目の情報,ならびに身長,体重,血圧など身体計測値,さらにヘモグロビン,総蛋白などの検査値も有意な関連がないことを確認した.空腹時血糖値が110 mg/d
l未満かつOGTTの2時間血糖値が140 mg/d
l未満の条件を満たすOGTT正常者のみを基準個体とした.さらに潜在異常値除外法により,基準個体の絞込みを行った.最終的にべき乗変換を利用したパラメトリック法により,HbA
1C(IFCC値)およびGAの基準範囲はそれぞれ3.0~4.1%,12.3~16.9%と設定された.
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