2006 年 49 巻 10 号 p. 809-814
症例は1962年生まれの女性.C型慢性肝炎に対し1999年7月から6カ月間,インターフェロン(IFN)を投与された.2002年5月に糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を来たしてインスリン治療を行ったが,血糖値(mg/dl)は2001年末まで110以下,DKA発症の4カ月前154, 2週前327, 発症時568であった.その後インスリン依存状態となりインスリン量は52単位/日まで増加した.抗GAD抗体,ICA, IA-2抗体が陽性で1型糖尿病と診断された.抗GAD抗体はIFN療法の途中まで陰性,終了直後の2000年1月に23.3 U/mlと陽性化し,糖尿病発症まで陽性が持続した.1型糖尿病の疾患感受性を示すHLAクラスII抗原DRB1*0901・DQB1*0302・DQB1*0303を有した.IFN療法に際し,GAD抗体のスクリーニングによる1型糖尿病の発症予知と二次予防の可能性を示唆する症例と考えられる.