抄録
2002年9月1日~2003年2月28日の半年間に愛知県内309病院に50 mg/dl以下の血糖値で他人の援助により緊急治療を要した重症低血糖の患者背景,病態,予後などを後向きにアンケート調査し87の病院の回答から以下の結果を得た.重症低血糖は182例で,その内訳は糖尿病患者が160例で,74歳以下112例,75歳以上の後期高齢者は48例,インスリンによるもの94例,経口血糖降下薬によるもの66例であった.非糖尿病患者は22例で,75歳以上は11例であった.糖尿病患者では,スルホニル尿素(SU)薬使用者で後遺障害例3例と死亡1例があり,ほかにナテグリニドで治療された73歳の腎不全の死亡1例があった.インスリンによる後遺障害,死亡例はなかった.非糖尿病患者の死亡例は7例で68歳の1例を除き6例が77歳以上で腎不全,癌など重篤な疾病患者であった.糖尿病とともに非糖尿病の高齢者低血糖の早期発見に努め,重症化をきたさないpre-hospital対策を含めた早期治療と予防体制の確立が重大な課題であることが示唆された.