2007 年 50 巻 8 号 p. 605-610
最近,多列化により空間的時間的解像度の進歩著しいMSCT (Multi-slice CT)を糖尿病の冠動脈狭窄の診断に応用し有用性を検討した.冠動脈疾患の診断が臨床上必要と考えられた2型糖尿病患者20名(平均年齢69.6歳,HbA1c 8.8%)に64列MSCTと冠動脈造影(CAG)を併行して実施した.冠動脈をLMTおよびRCA, LAD,回旋枝各3セグメント計10部位にわけ,CAGとの診断一致率を比較した.MSCTは200(10×20名)部位中,石灰化などの影響を受けずに読影し得た181部位(90.5%)のうち50%以上狭窄を有意とすると29部位で狭窄ありと診断,感度79.3%,特異度96.1%であった.この結果より冠動脈狭窄ハイリスクと考えられた糖尿病患者においてもMSCTで正常なら,臨床上問題となる冠動脈狭窄は概ね否定しうると考えられた.糖尿病患者における冠動脈疾患の診断法として非侵襲的という観点からMSCTの有用性は高い.しかし,石灰化病変により読影不能な部位の存在やこれまでの報告に比してやや低い感度は糖尿病におけるスクリーニングとしてMSCT応用のうえで今後の課題となる.